2011年度佛教大学通信課程のレポートです。
「医療をめぐる法律問題について」
参考:中川淳 編『現代法学を学ぶ人のために(第二版)』(世界思想社、2008年)
医療をめぐる法律問題について。
はじめに
近年、わが国の医療をめぐっては、技術の発達や高齢化の進展などに伴って様々な問題がおきている。とくに法的な観点からは以下2つの重要な論点が指摘できる。第一に、医療における患者の権利の確立に関する諸問題である。そして第二に、医学の急速な進歩が生み出した新しい技術─とくに人間の生と死に関わる技術─をめぐる諸問題である。小稿では、この二点についてそれぞれ考察してみたいと思う。
医療における患者の権利の確立
わが国における従来の医療は、恩恵的・権威主義的色彩を帯びたものであったが、近年では医療の高度化・複雑化や、患者数の増大に伴う診療時間の短縮などを契機として、医師と患者の関係を権利義務に基づいた関係に変えていくことによって適切な医療を確立しようとする動きが顕著である。
その具体的な動きの1つが、医療における患者の主体的地位の尊重である。先に指摘したように、従来の医療においては医師の権威主義の影響のもとにあり、簡単に言えば、患者は医師の「言われるがまま」に治療を受けることが多かった。しかし、医療の実施に際して患者は主体的な地位を認められるべきであり...