基礎実習レポート10

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    資料の原本内容

    基礎実習レポート  1-10 酸-塩基平衡:熱力学的変量の決定
     実験実施 2010/05/21

     提出 2010/05/26
    Ⅰ.目的と概要

    Glycyl-L-tyrosineのフェノール性水酸基の解離における平衡定数を吸収スペクトル測定により求める。さらに、得られた平衡定数を用いて、解離に伴う標準自由エネルギーの変化量を算出する。
    Ⅱ.原理

     テキストに準ずる。
    Ⅲ.実験手順と結果

    pHメータと調節した。水溶液の温度を測定したところ23.3℃であった。

    最終濃度約4.0mol/Lの溶液100mLに調製された溶液のpHを量ったところpH=5.97であった。ただしこの溶液にはKCl溶液をKCl濃度が0.15mol/Lとなるように添加してある。

    上記試料およびNaOHのビュレットを用いる添加によりpHを変化させたもの(pH=7.01,8.03,9.15,10.03,10.99,11.96,12.95)についてそれぞれ270-300nmの波長領域での吸光度を適当な波長幅で測定した。この結果とpH調製のために用いたNaOHの添加量を【表1】に示す。またこの測定した吸光度ODobsはNaOHの添加に伴う体積変化を考慮し補正しなければならない。NaOHの添加量をΔVとし、最初の資料の溶液の体積をV0mLとすると、補正吸光度ODcorrectは以下の式で求められる。

    この式によって求めた値を【表2】に示す。ただし、今回用いた溶液の体積は100mLであったのでV0=100mLとした。

    【表1】各波長における吸光度と添加したNaOHの体積
    【表2】各波長における補正吸光度と添加したNaOHの体積
     次に、表2から、縦軸を補正吸光度とし横軸を波長とする吸収スペクトルのpH依存性を【グラフ1】として図示する。

    この吸光度の結果を用いて解離度αを求める。ランベルトベールの法則より、
    一方、以下の式が成り立つ。
    ①②より、
    ここで、
     表2より、pH=5.97のときの波長295nmにおける補正吸光度をODHA、pH=12.95のときの補正吸光度をODA-とすると、各pHにおける解離度αを③の式によって求めることができる。結果を【表3】に示す。また、表3を図示したものを【図1】として以下に示す。ただしpH=7.01における解離度αは、測定機器の誤差によるはずれ値としてプロットしなかった。

    【表3】各pHにおける解離度αの計算値
    【図1】解離度αとpHの関係
     ヘルムホルツ標準自由エネルギー変化量を求める。

     ここで、
    pH=pKaかつ、α=0.5である。
    図1からα=0.5のときのpH=10.15  すなわち、pKa=pH=10.15
    これより、
    Ⅳ.考察

    なぜ295nmの波長を選んだか。
     Woodward則に従って計算すると、アルキル基1置換のフェノールは、吸収極大を275nm付近にもつことがわかる。実際pH=5.97の時の吸収極大は275nm付近にあったことからも確かめられる。これにNaOH液を添加すると、水素イオンが解離し、酸素上の孤立電子対がより芳香環との共役に関与するため吸収極大が長波長側へシフトする。すなわちグラフからも明らかであるが、295nm付近にシフトする。吸収極大を持つ波長における吸光度の測定結果を用いると、各pHにおける吸光度の差が大きくなるため、測定値に対して測定誤差が占める割合が減少し、より正確な結果を得ることができると考えられる。このため派長295nmの吸光度を用いて結果を求める。

    塩化カリウムを添加する理由
     実在溶液において、物質の濃度と効力間の比例関係は厳密には成り立たず、静電的相互作用の影響を受ける。よって静電的相互作用により、反応で解離したイオンが溶液中のK+およびCl-によって安定化されると考えられる。静電的相互作用の度合いを示す指標である活量計数はイオン強度に影響されることから、KClを加える意義はイオン強度を高めて、解離反応を安定して進行させるためだと考えられる。すなわち、安定して反応が進行することによりpHの測定時間が短くなりひいてはpH測定の誤差を軽減することができる。

    求めた標準自由エネルギーの値から何がわかるか。
     ある系において、化学反応は標準自由エネルギーが負になる方向へ自発的に進む。一方標準自由エネルギーが正ならば、系外部からの熱エネルギーの供給やpHなど反応環境の調整が必要となる。Glycyl-L-tyrosineのフェノール性水酸基の解離は、標準自由エネルギーが正であったので中性条件下ではほとんど解離しないことが分かる。
    Ⅴ.参考

     斎藤寛ほか編,パートナー分析化学Ⅰ,南江堂,2007,299p

     “液体の化学”HTML 参照2010/05/21

    http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/ubung/yyosuke/lclec_text/chemliq04_front.htm

    L.M.ハーウッド,T.D.W.クラリッジ著、スペクトル解析入門、化学同人、1996、144p

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