生命情報科学特論

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    資料の原本内容

    火曜2限  生命情報科学特論
    【症例】問診により、以下の情報を得た。但し、( )内は正常範囲値を表す。

    30歳未婚女性、右胸の痛みとしこりが主訴で来院。検査の結果、乳腺繊維腫と診断された。母が乳がん、父は高脂血症を罹患。「自分も乳がんになるのではないか」と不安を感じている。花粉症で年中鼻水の症状がありアレグラを服用中、薬にアレルギーはない。健康食品としてメリロートを服用中。20歳の時に虫垂炎のため手術を受けた。会社の健康診断の結果、腎機能と肝機能に問題はなし。コレステロール180mg/dL(130-200mg/dL)中性脂肪 75mg/dL(40-130mg/dL)血圧102-80mmHg(130-85mmHg未満)食前血糖値 80mg/dL(70-100mg/dL)タバコを吸ったら痩せると聞き、一日10本の喫煙。デスクワークの仕事が基本で休日の運動習慣なし。休日も仕事が残っていることが多く、家で仕事をしている。生理不順はないが便秘気味。ほぼ毎日外食やコンビニ弁当、脂っこい物が好きで野菜をとらない。仕事のストレスを強く感じている。
    【乳腺繊維腫について】

    ・疫学的データからは、乳腺繊維腫から癌が発生することはほとんどない。

    ・ホルモンの乱れなどが考えられているが、原因ははっきりしない。

     ・この病気自体の治療はしないが、ガン予防やホルモンバランス改善のためには生活習慣の改

    善が必要。
    【乳がんについて】

     ・予防には脂肪の少ない食事、バランスのとれた食事、変化のある食生活、適度なスポーツ、

      禁煙、カビ・焦げを取らないことなど、生活習慣の良しあしがカギになる。

     ・状態にもよるが早期発見によって温存療法が可能。

     ・硬いしこりに気づくことが多い。月一度の自己検診によって普段の状態を知ることで、専門

    医でも見逃しやすい初期の病変に気づくことが出来る可能性がある。
    【喫煙について】

    ・喫煙は各種癌や虚血性心疾患、慢性閉塞性肺疾患の罹患率が高くなる。(FDA)

    ・ニコチンの働きでノルエピネフェリンやドパミンが誘導され、食欲抑制作用はあるが、一酸

    化炭素やタールなどの有害物質が多く含まれ、結果として疾患につながる。(疫学的研究)

    ・禁煙外来が整備されてきている。

     健康保険等を使った禁煙治療では、12週間で5回の診察を受けることができる。

     毎回の診察では、禁煙補助薬の処方を受けるほか、息に含まれる一酸化炭素の濃度を測定し

    たり、禁煙状況に応じて医師のアドバイスを受けることができる。

     ・ニコチンパッチ、ニコチンガムなどの商品が販売されている。
    【看護師の立場からの対応】

    生活習慣の改善・定期検診のための来院を促す・上記実行のための情報提供

     

    頭ごなしに「病気になりたくなかったら運動しなさい!禁煙しなさい!食べ物に気をつけなさい!」と言うだけでは、患者さんのモチベーションを下げたり反発を招くだけでなく、追い詰めてしまい大きなショックを与えかねない。とくに生活習慣改善などは、患者さん自身に動機をもって行動してもらわないと、何かを進言したとしても無意味なものになってしまう。このことを踏まえると、「喫煙・肥満・乱れた食生活を続けてしまうと、この先心疾患や動脈硬化・癌になる可能性が高まります。今からでも改善していけばこれらの病気を予防できますよ。」というように、偏った食事や喫煙の危険性などの正しくかつ具体的な情報提供をしたり、それを補うための情報源(信頼できる健康雑誌・Webサイトなど)を提示したりするなど、啓発的に対応するのが良いと考える。医者よりも患者さんに近い立場にある看護師のほうが伝わりやすい部分もあるので、生活習慣改善に役立つ具体的な情報提供を中心に行う。
     具体的には…

     ●医師の補助的に情報提供

     ・生活習慣の改善とがんの早期発見の重要性を強調して伝える。早期発見・早期治療によって

    治療の選択肢が広がりより良い予後が望める。乳がんなら、信頼できるWebサイトに掲載さ

    れている方法を参考に、自己検診を行うのを勧める。

     ・経済的負担への心配が来院を渋る原因にならないようにするために、禁煙外来では「保険が

    適応される」ことを伝える。また、禁煙の補助となるような製品が市販されていることを知

    ってもらう。(ニコチンガムやニコンチンパッチなど)

    ●運動習慣をつけるようにアドバイス

    ・恋人や家族と一緒におしゃべりしながらウォーキングするなど楽しみながらやってみる。

    ・仕事までの往復で、歩くときに早歩きを心がける。(ふつうに歩くより早歩きしたほうが消

    費カロリーが増加)

    ・通勤のバスを一駅手前で降りて歩いてみる。

    ・毎日はできないなら週一回でもいいのでとにかく心がけるようにする。

    ●野菜をとる工夫と情報提供

    ・食物繊維は腸を整え、便秘を改善する。

    ・果物と一緒にジューサーで加工してとる。

    ・スープなどに調理して嵩を小さくして量を摂る。

    ●定期的な検査のための来院を促す

    ・会社の健康診断 年一回

    ・産婦人科の検診 年一回 →目的:乳がんの早期発見、不安を取り除く

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