毒性学

閲覧数1,408
ダウンロード数5
履歴確認

    • ページ数 : 2ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    資料の原本内容

    毒性学レポート  ナノマテリアルの利用について
    2010/07/26提出
    ▼ナノマテリアルとは

    ナノマテリアルとは、縦横奥行のうちいずれかが100nmを下回る大きさの物質のことを指す。粒子状、シート状、繊維状のものなど、様々な形状がある。現在使われているナノマテリアルおよび、応用が期待されるナノマテリアルの例を以下にまとめた。

    ・プラチナナノコロイド(抗酸化作用)→健康食品、化粧品、抗胃腸炎薬
    ・酸化チタン(紫外線遮断効果、殺菌作用、着色効果)→化粧品、食品添加物
    ・酸化亜鉛(消炎鎮痛作用、紫外線遮断効果)→化粧品、顔料
    ・シリカ(血液凝固作用)→カテーテルの部材
    ・ヒドロキシアパタイト→歯科治療、人工骨
    ・フラーレン(活性酸素除去、疎水性、DNA切断)→抗エイズ薬、抗C型肝炎薬、スポーツ用品
    ・リポソーム→化粧品、抗がん剤を中心とした薬物のDDSへの利用
     このように、ナノマテリアルは種類や使用される現場が多岐にわたり、大きな市場を形 このように、ナノマテリアルの種類や利用される現場は多岐にわたり、大きな市場を形成している。今後の研究によりさらなる使用の拡大が予想される。
    ▼ナノマテリアルの危険性

     ナノマテリアルのうち、微小粒子の形状のものは血液脳関門や血液胎盤関門などを容易に通過すると考えられる。また、現在化粧品などに多く使われている化学物質よりも皮膚への透過性が高いと予測される。ナノ粒子の体内への蓄積の危険性や、代謝・排泄機構は未だ不明であるが生体内分子への結合や酵素阻害などの危険性が指摘されている。
     実験動物への大量暴露によるナノマテリアルの危険性の報告や、実験動物への暴露による安全性の証明を行った報告があり、有害性の評価や暴露の規制が困難である。また、ヒトへの影響は必ずしも実験動物と一致するとは限らないので、動物実験の結果からは安全を断言できない。
    ▼現在の規制状況と今後の展望

     ナノマテリアルは非常に多様性に富む素材である。同じ化学組成の物質でもサイズの違いや用量の違い、コーティングや製造法の違いから用途や使用現場が多岐にわたり、様々なフィールドで使用することができる。しかしながら、多様性ゆえに安全性の評価や規制が非常に困難である。つまり、ナノマテリアルは非常に有用な素材ではあるがレギュレーションが不十分というのが現状である。また使用許可されている物質の種類や規制状況が世界各国で異なることも問題であり、国際標準化を目指すべきである。日本は国際標準化プロジェクトのリードスポンサー国であり、研究の推進と結果報告の義務を負う重要な立場であることから、ナノマテリアル使用のガイドラインの作成が急務である。一方で、現在の管理不十分な状態では、アスベストに代表されるような予期せぬ健康被害が発生する可能性があるため、ナノマテリアルを使用すべきでないという意見もある。
    ▼参考

     産業技術総合研究所安全科学部門HP (2010/07/18 参照)http://www.aist-riss.jp/main/

    平成21年度厚生労働省ナノマテリアルの安全対策に関する報告書および参考資料(2010/07/18参照)http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0331-17.html
     このような現状を踏まえたうえで、私はナノマテリアルの利用を推進すべきだと考える。健康被害は懸念されているが、有用性の高いナノマテリアルの使用が、病気の治療における選択肢の増加や文化の発展に寄与することは間違いない。ただし、ナノマテリアルの使用の推進に伴い、医薬品はもとより食品や化粧品などにもより多くの種類の化学物質がより多くのフィールドで使用されるようになることは容易に想像できる。このことから、管理および健康被害が発生した場合の迅速な対応のために、現在進められている国際標準化や使用に関するガイドライン整備、ナノマテリアルの情報のデータベース化は必須であり、早期に整備される必要があると考える。

    今後は、ガイドラインの作成など管理・販売側の制度構築だけではなく、消費者側への、化学物質のリスクとベネフィットの考え方や食品・医薬品に関する教育が必要であると考える。社会的な影響を考慮して、安全性が証明されていない化学物質を使用するにあたっては、消費者側とのリスクコミュニケーションが必要であると考える。しかしリスクコミュニケーションがしばしば困難であるのは、化学物質の多様化や情報の氾濫によって利用者と管理者の間の知識レベルの溝が深くなる一方であるからであると推察する。薬学を学び、実際に消費者側の立場にある人と接する機会の多い薬剤師は、リスクコミュニケーションを円滑に進める上で重要な役割を担えると確信している。

    具体的には、実際にナノマテリアルを利用する際は、「そば、小麦、タマゴ」など食品のアレルゲンの表示や管理と同様に、ナノマテリアルを含む化学物質の表示と管理に関しても積極的に行う必要があると考える。しかし、「そば、小麦、タマゴ」などと違って化学物質名は消費者にとって聞きなれない言葉が多く難解であるため、やはり先に述べたような消費者側の教育やわかりやすく情報を伝える工夫が必須である。どのような組織でも「報告・連絡・相談」の重要性が強調される。ナノマテリアルのような新しく開発された化学物質を安全に利用するためには、情報の共有こそが最重要である。

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。