近代デザインの源流
近代デザインではイギリスの詩人、思想家、デザイナーであるウイリアム・モリスが主導した「デザイン」の運動である「アーツ・アンド・クラフツ運動」の業績が、いつも中心に据えられる。ウイリアム・モリスは工場制機械工業工場の導入による産業革命の結果として大量生産による安価で粗悪な商品があふれている状況を批判して、中世の手仕事に帰り、日々の労働が創造の喜びに包まれていた中世の工芸を復興しようとしたのである。
ウイリアム・モリスの運動自体は結局高価な製品を作ることになってしまい、裕福な階層にしか使えなかったという批判もあるが、生活と芸術を一致させようとしたモリスの思想は各国にも大きな刺激を与え20世紀の「デザイン」の源流になったといわれている。
1880年代に入るとウイリアム・モリスの姿勢に共鳴する世代が現れ、それらはひとつの潮流とみなされ、広く「アーツ・アンド・クラフツ運動」と呼ばれている。この頃から、やっと近代的な「デザイン」の意識が民衆の中に芽生えだしたのである。
20世紀に入って「デザイン」が生産者にとっても消費者にとっても重要な意味を持つものとして自覚されてきたこと...