ヴィクトリア時代の小説について、当時の社会背景なども考慮しながら述べよ
『ヴィクトリア時代の小説について、当時の社会背景なども考慮しながら述べよ』
1837年に18歳の少女ヴィクトリアが即位し、ヴィクトリア時代が始まった。この体力、意力、精力ともに優れた女王が在位した64年の間、イギリスは安定した秩序を保ちながらかつてない発展をとげた。しかしその内部には様々な矛盾を抱えていた。小説はヴィクトリア時代に活気を呈し、この時代の文学史の中心的な位置を占めるものである。小説家は読者の首肯できる世界観のうちに定着して、当代の世相や市民の日常生活を如実に描いた。また、そういう小説が一般人の読み物として普及する社会的な条件が整っていた。
【ヴィクトリア時代初期(1837-1850)】
ヴィクトリア時代初期は「飢餓の40年代」(hungry forties)といわれるように、40年代にいたって農作物の飢饉が深刻な様相を呈した。その飢饉に端を発して、労働階級の政治的発言を強化(労働者階級の参政権獲得)しようとするチャーティズム(Chartism, 人民憲章運動)が広まった。
この時代の小説の隆盛に誰よりも大きく寄与したのは、チャールズ・ディケンズ(Charles Dic...