『戦争と平和の法』について
このレポートはグロティウスが「国際法の父」と呼ばれるきっかけとなった著作『戦争と平和の法』の概要を述べ、グロティウスが「国際法の父」と呼ばれることへの妥当性を批判的に論じたものである。以下、そのことについて述べていく。
『戦争と平和の法』は冒頭に序説としてプロレゴレナを置き、次に本論として三つの部分から構成されている。グロティウス自身が序言の中に記した各巻の内容・構成は次のとおりである。
「第一巻では、法の淵源について予備的な考察を行った後に、何等か正しき戦争なるものが存するや否やの一般的問題を検討し、次に公戦と私戦とを区別するために、最高支配権(vis summi imperii)とは何か、いかなる人民がかかる最高支配権を有するか、いかなる王が完全なる最高支配権を有するか、何人が部分的なる最高支配権を有するか、何人が譲渡権と共にこれを有するか、何人がその他の方法にてこれを有するかを、更に従属者(subditum)の上位者に対する義務をも考察している。 第二巻では、戦争の生じ得る一切の原因を究明するために、次の諸点を充分説明しようと企てた、即ち、いかな...