『児童・家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度』
「児童・家庭福祉制度の発展過程について述べなさい」
『児童・家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度』
「児童・家庭福祉制度の発展過程について述べなさい」
児童を一人の人格主体としてその権利を尊重し、福祉を守るようになったのは、人類の歴史のうえでは20世紀になってからのことである。
日本においては、第二次世界大戦前には、児童福祉施設としての孤児院、非行・犯罪に対する感化院、保育事業としての託児所、障害者を対象とした施設などが、志をもった個人により民間で作られた。また、児童保護のために矯正院法、少年救護法、保健所法、母子保護法が成立した。
戦後、1947年に児童福祉法が成立した。その第1条で、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成されるよう努めなければならない」と、その社会的責任を明記される。第2条では、「国及び地方公共団体は児童保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と、その公的責任を明記している。この児童福祉法では、これまでの保護を要する児童のみへの対応という考え方から、すべての児童の健全な成長発達を保障するという考え方に変わった。これは、児童の福祉を図るための総合的なもので、その後の我が国の児童福祉を進めるための基本的な法律となった。
戦災孤児などの要保護児童は12万3000人とされ、戦後の数年は、要保護児童をまず施設に入所させて生活の安定を図ることが急務であったが、正常な発達段階をどのようにして保障していくかという段階に移っていった。
児童福祉とは、児童に対して行われる福祉サービスのことを指す。児童に対する福祉は、従来、障害児、孤児、母子家庭の児童に代表されるような、特別に支援を要するとされる児童に対する施策を中心に行われてきた。しかし、近年になり、高齢化と同時に社会の少子化が急速に進行していることを受け、全ての家庭において児童が健全に育成されること、また、児童を生み育てやすい社会環境を整えることを主眼とした施策が中心となってきている。
10年ほど前から、児童福祉に代わって児童・家庭福祉という言葉が使用されるようになってきた。これは、児童という表現が、小学校以下の子どもに限定されると思われてしまうことを避けるため(児童福祉法にいう児童は18才未満とされる)、そして、児童の福祉を考えるときには家庭の問題が大きく影響しているためである。子どもと家庭環境を一体的に考えて対応しないと、児童福祉の問題は解決できない。また、子どもを育てやすい社会を整備していくことが、児童福祉には重要である。
1964年に母子福祉法、1965年に母子保健法が制定された。子どもを養育する家庭の生活の安定化を目的として、母子福祉年金、児童扶養手当が導入され、11971年には児童手当法が成立する。
今後の子ども児童・家庭福祉の方向性としては、以下のようなものが挙げられる。
①「保護的福祉」から「支援的福祉」へ
②「血縁・地縁型子育てネットワーク」から「社会的子育てネットワーク」へ
③「与えられる(与える)福祉」から「選ぶ(選ばれる)福祉」へ
④「点の施策」から「面の施策」へ
⑤「成人の判断」から「子どもの意見も」へ
⑥「家庭への介入抑制」から「子権のための介入」へ
⑦「ウェルフェア(保護的福祉)」から「ウェルビーイング(well-being)」へ