損害賠償責任について説明し、最2小判平9・7・11民集51巻6号2573頁以下にある判決の是非を論じる。第一に、損害賠償責任とはどのようなものか判例を挙げて説明する。第二に、最2小判平9・7・11民集51巻6号2573頁以下にある判決の是非について判決の内容を説明し、その是非を論ずる。
一、損害賠償責任について
損害賠償とは民法上、債務不履行・不法行為などで損害(将来得るはずだった利益を失った場合も含む)を受けた者である被害者に対して、その原因をつくった加害者が金銭などによって損害の埋め合わせをする法律上の義務のことをいう。民事訴訟において、ごく標準的な解決方法となっており、その目的は、第一に被害者の救済、そして第二に加害者が同様の違法行為を繰り返すことを抑止することが挙げられる。
不法行為の例として、交通事故を取り上げる。加害者Xの運転する自動車により、右下腿骨複雑骨折等の傷害を負った被害者Aが、搬送された病院の医師Yによる不適切な治療措置によってガス壊疽に罹患。右大腿部の切断を余儀なくされたケース(横浜地判昭和57年11月2日判時1077号111頁)がある。判決では、Xと...