<はじめに>
学習指導要領の改訂における道徳の教科化では、今日の学校における深刻な「いじめ問題」等の児童生徒の生徒指導上の諸問題を発端に、従来の道徳教育や、各教科などに比べて軽視されがちであった「道徳の時間」の授業を改善し、実効性のある道徳教育を充実させることを目指している。従来の道徳教育は「読み物道徳」と揶揄されることがあり、教材である読み物資料から道徳的な価値である内容項目の理解や習得に焦点が当てられていた。そこで、今後は、道徳教育に関わる教育課程上の基本的原則や、我が国のこれまでの学校における道徳教育の基本理念は踏まえつつ、学習の課題を明確にしていかなければならない。また、価値観相対比化している現代に生きる児童に道徳教育で何を養うか、という課題もある。
「多面的・多角的」に深く考えられる力などの育成を目指し、2008年の学習指導要領で示された「言語活動」を柱とした道徳学習を実践しようとしている。
本レポートでは、一部改正学習指導要領において、これまでの道徳教育における課題の改善がどのようなかたちで試みられているのかを、①道徳教育の目標、②「道徳科」の内容、③道徳の指導計画、の...