現代社会の貧困の様相からみる、公的扶助の役割について述べなさい。また生活保護制度や自立支援、低所得者対策などの動向を踏まえて、「自立」の考え方について論じなさい。
社会保障制度は、国家が主体となり広く国民を対象として生活を保障する制度的仕組みである。主として貧困者に対して生活を保障する救貧制度を公的扶助制度と呼び、国家責任のもと、最低生活保障水準あるいはそれに近い生活保障水準の不足に対する生活需要を補う目的として、貧困・低所得者を対象に、資力調査あるいは所得調査を課し、貧困・低所得者の請求あるいは申請をもって、給付・貸付を行う制度であり、公費を財源として行う救貧対策である。公的貧困制度は、貧困・低所得者への対応策(制度・政策およびソーシャルワーク実践)として位置付けられる。
貧困とは、一般的には、個人もしくは家族が社会生活を営むために必要な資源または生活資料を欠く状態を指している。貧困・低所得者の生活課題は、所得あるいは資産が十分に備わっていないといった経済的問題が基底となり発生する。それは、雇用の不安定・低賃金・失業といった労働にかかわる側面にとどまらず、経済的基盤の不安定さからくる消費の萎縮、家族関係の破綻、住環境の悪化といった生活諸側面に多岐にわたり現れるのが特徴である。また近年の雇用・失業問題は、国民・住民生活の経済的基盤を揺るがし、...