【正当防衛】

閲覧数1,832
ダウンロード数2
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    正当防衛についての論証

    資料の原本内容

    【正当防衛】

    【正当防衛の成立要件】

    【要件*】
    正当防衛が成立するためには、
    ①「急迫不正の侵害」に対して、
    ②「自己又は他人の権利」を
    ③「防衛するため」、
    ④「やむを得ずにした行為」であること、
    が必要である。
    ※任意的減免! ※×正当防衛が成立しないか ○正当防衛が成立し,違法性が阻却されないか
    ※通説は、法益保護原理に加えて法確証原理を持ち出す。

    【不正性】
    動物による侵害に対しても正当防衛
    が成立するか。動物の挙動は「不正
    」に当たるのかが問題となる。

    ※→緊急避難の検討
    36条1項の「不正」とは、法秩序に反すること、すなわち違法と同義と解されるところ、違法性の本質は社会倫理規範に違反した法益侵害にある。そして、規範は人間に対して向けら
    れるものである。
    とすれば、動物の挙動は「不正」とはなりえず、対物防衛は成立しない。

    【急迫性】
    【判例の急迫性の理解】

    ①客観的な急迫不正侵害の存在→急迫性あり
    ②客観的な急迫不正侵害の存在+侵害の予期の有無→急迫性あり
    ③客観的な急迫不正侵害の存在+侵害の予期の存在(当然でなくても良い)+積極的加害意思の有無→急迫性否定。
    →積極的加害意思という行為者の主観的事情によって急迫性が否定されることにより、急迫性が人によって相対化することを認めることになる。

    【侵害の予期】
    【百選】【23】【内ゲバ事件/最決S52.
    7.21】侵害を予期しているに過ぎな
    い場合、急迫性は認められるか。

    【定義*】
    ※侵害が現に存在している場合に限られるわけではない
    ここで、侵害の急迫性とは、法益侵害の具体的危険をいう。
    もっとも、急迫性が要件とされているのは、予期された侵害を避けるべき義務を課す趣旨ではないため、侵害を予期していたとしても、そのことから直ちに急迫性は失われない。

    【積極的加害意思】
    【百選】【23】【内ゲバ事件/最決S52.
    7.21】敵の襲撃を事前に知りつつ、
    迎撃態勢を整えたうえで積極的に加
    害する意思で防衛行為を行った場
    合、侵害の「急迫性」の要件(36条1
    項)を満たすか。

    侵害の急迫性とは、法益侵害の具体的危険をいう。
    もっとも、
    ①侵害を当然またはほとんど確実に予期したうえで、
    ②その侵害に対して積極的加害意思を有する場合
    には、もはや法益侵害の具体的危険は認められないため、侵害の急迫性は失われると考える

    【急迫性の継続】
    【鉄パイプ事件/最判9.6.16】急迫不
    正の侵害の継続性の判断方法(判
    例)

    ①相手方の加害意思の存在(主観的要素)と
    ②再度の攻撃可能性(客観的事情)
    から判断する。

    【判例あてはめ】
    【鉄パイプ事件/最判9.6.16】急迫不
    正の侵害は継続していたか(あては
    め)

    Aは、Xに対し執ような攻撃に及び、その挙げ句に勢い余って手すりの外側に上半身を乗り出してしまったものであり、しかも、その姿勢でなおも鉄パイプを握り続けていたことに照ら
    すと、同人のXに対する加害意思は、おう盛かつ強固であり、Xがその片足を持ち上げて同人を地上に転落させる行為に及んだ当時も存続していたと認めるのが相当である(①)。また
    、Aは、右の姿勢のため、直ちに手すりの内側に上半身を戻すことは困難であったものの、Xの右行為がなければ、間もなく態勢を立て直した上、Xに追い付き、再度の攻撃に及ぶこと
    が可能であったものと認められる(②)。
    そうすると、AのXに対する急迫不正の侵害は、Xが右行為に及んだ当時もなお継続していたといわなければならない。

    【タバコ急迫性事件/最判H16.7.23】
    侵害の急迫性は行為時まで継続し
    ていたか。

    本件は、被害者が、深夜、いきなり被告人宅に上がり込み、被害者とつきあっていた女性に対する被告人の言動に因縁をつけ、怒鳴り散らし、その腹部を蹴り、顔面を殴打するなど
    の暴行に及んだのであるから、被告人に対する急迫不正の侵害があったことは否定できない。
    ■では、侵害の急迫性は行為時まで継続していたか。
    また、①被害者の暴行脅迫と刺突行為は時間的に非常に接着している上、②被害者は被告人に背を向けてタバコを吸っていたとはいえ被告人に対する暴行脅迫の意思を放棄した
    と思われる行動をとっていないこと、③何らの決着が付かないままに途中で因縁をつけることを止めなければならない事情は全くうがわれないこと、④被告人は当時64歳で中肉中背
    であるのに被害者は当時44歳でがっしりとした体格であること、⑤被告人が屋外に脱出するには被害者のすぐそばを通る必要があったことを考え合わせると、客観的に暴行脅迫が
    継続される可能性が高く、侵害の急迫性が失われたと評価できない。
    被告人は主として積極的に攻撃する意思で刺突行為に及んだ旨供述するが、本件は、被告人が侵害行為を予期しながら積極的加害意思により、この機会を利用して犯行に及んだ
    事案でないから、主として積極的に攻撃する意思で犯行に及んだことをもって侵害の急迫性を否定できない。
    また、攻撃の意思と防衛の意思は併存するから防衛の意思が欠けるとはいえない。

    【東京地判H14.11.21】あてはめ

    Aはしばらくは両足をばたつかせたり膝を立てて起き上がろうとするなどしていた事実、本件以前にも酒に酔って暴れることが度々ありその際にも途中で押さえつけている力を緩める
    と再び暴れ出したりしたことがあるという事実、Aはかなりの酩酊状態にあったという事実から、Aの体をいったん押さえつけた時点では、再度の攻撃の可能性は否定できない以上、急
    迫不正の侵害は継続しているといえる。

    【防衛の意思】

    【判例の防衛の意思の理解】

    ①【くり小刀事件】憤激、逆上等の事情→防衛の意思肯定(←攻撃意思と併存していても存在すると認められるものだから。)
    ②【花火散弾銃事件】攻撃の意思があっても防衛の意思と併存しうると認められる場合→防衛の意思肯定(←「防衛に名を借りて攻撃を加える」場合、「専ら攻撃の意思」で反撃した
    場合には、防衛の意思が否定されているが、これらの場合にも「正当防衛状況の認識」は存在しているから。)
    ③【スナック包丁事件】反撃行為がもっぱら攻撃の意思でなされた場合→防衛の意思否定
    判例は、防衛の意思を単に「侵害の事実の認識」とするものではなく、それに加えて「侵害に対応する意思」あるいは「侵害を避けようとする単純な心理状態」といった意思的要素を要
    求するものであると解することができる。
    →このような判例の状況から、少なくとも防衛の程度が過剰にわたった「過剰防衛」の場合を除けば、「行為者が専ら攻撃の意思によって行動に出ており防衛の意思を欠いている」と
    認められる場合は殆ど考えられず、「防衛の意思」は正当防衛の要件としての機能を失っている(「防衛の意思」は専ら「過剰防衛」による刑の減免のための要件となっているのが実情
    である)、との理解が一般的となりつつある。

    1

    【大判S11.12.7】【百選】【24】【最判S5
    0.11.28】防衛の意思の要否・内容と
    は。

    【定義*】
    ※偶然防衛の場合に防衛の意思を否定!
    ※※判例は防衛者が攻撃の意思を有していても、防衛の意思と併存する限り、防衛の意思は認められると解する
    まず、防衛の意思は、36条1項の「ために」という文言から、必要である。
    もっとも、正当防衛は緊急時における反射的行動であり、防衛の動機・目的を厳格に要求することはできない。
    そこで、
    ①急迫不正の侵害を認識しつつ
    ②それを回避しようとする単純な心理状態
    で足りると解する。

    積極的加害意思と防衛の意思の関
    係とは。

    両者は段階的関係にある。
    すなわち、
    ●積極的加害意思は急迫性の消極的要件であるから、反撃行為に及ぶ以前の反撃行為の予備・準備段階における意思内容が問題となるのに対して、
    ●防衛の意思は現に反撃行為に及ぶ時点における攻撃意思の有無・程度が問題となる。

    【自招防衛】

    自招防衛の類型

    ①行為者Xが、正当防衛状況下でAを殺傷するという目的をもって、Aに対する挑発的行為(第1行為)に出た結果、Xの予期した通りにAがXに対する侵害行為(第2行為)に出たため、
    Xがそれに対して反撃(第3行為)を行ったという場合(いわゆる「意図的挑発」の場合)。
    →積極的加害意思により急迫性が欠ける。
    ②行為者Xが、正当防衛状況下でAを殺傷する目的などは持っていなかったが、自分の行為がAに対する挑発的効果を持つことを認識しながら(又は認識可能でありながら)Aに対し
    てその行為(第1行為)に出た結果、AがXに対する侵害行為(第2行為)に出たため、Xがそれに対して反撃(第3行為)を行ったという場合(いわゆる「故意的(過失的)挑発」の場合)。
    →自招侵害が問題となる。
    ③行為者Xが、Aに対する一定の侵害行為(第1行為)に出た結果、それがAに対する挑発としての効果を持つことになり、AがXに対する報復として侵害行為(第2行為)に出たため(※)
    、Xがそれに対して反撃(第3行為)を行ったという場合。(※Aの第2行為がXの第1行為に対する正当防衛に当たらない場合に限る。)

    【ラリアット事件/最決H20.5.20】被侵
    害者が自ら故意により招いた侵害に
    対する防衛行為に、正当防衛(36条
    1項)が成立するか。

    【自招防衛】【故意的(過失的)挑発】【権利濫用説、優越的利益説(従来の多数説)】
    【原則】
    ここで、
    ①侵害者の攻撃が防衛者の暴行に触発されたものであり、
    ②その直後における近接した場所での一連一体の事態である場合は、
    ●当該侵害は、防衛者が不正の行...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。