ゴリオ爺さん
評価:B
2012年度 文学 第四課題
オノレ・ド・バルザック(1799-1850)はパリの法律事務所で見習書記として研修を行うとともにパリ法科大学で学び、20歳のとき、両親の希望する公証人の経歴をとらず作家になることを宣言する。当初は当時の王道である韻文劇を、次に小説に転じて、いくつかの筆名を使い分けながら通俗小説や新聞雑誌の記事を大量に書いた。代表的な作品としては、『最後のふくろう党員』、『結婚生理学』、『人間喜劇』などがある。
本作品は、1835年に発刊され、『人間喜劇』のうち「風俗研究」の「私生活場景」に含まれる。作中人物が他の小説にも登場する、人物再登場の手法を始めて意識して用いた作品である。以下に本作品のあらすじを簡潔に記す。
1819年、パリのカンチエ・ラタンにある家賃が程良い下宿屋ヴォケール館には様々な社会背景を背負った7人の住人が住んでいた。本作品の主人公ラスティニャックは立身出世を夢見た野望家の青年である。ゴリオ爺さんと呼ばれる元製麺業者と、ヴォートランという謎の中年男もいる。下宿の人たちはゴリオ爺さんに対して嘲り笑わっていたが、上流階級に嫁いだ2人の娘...