権利能力なき社団とは、一般に、社団としての実体を有しながらも法人格のないものをいう。すなわち、学術団体、町内会、同窓会、PTAなどの団体や労働組合、また設立中の社団法人も手続きの完了までこれにあたる。権利能力とは私法上の権利・義務の帰属主体となり得る資格のことであるが、法人格が認められている必要がある。故に法人格の無い上記団体は権利能力なき社団とされる。権利能力を有しないため、それ自体は権利及び義務の主体となりえないにもかかわらず、社団としての実質を備えて活動しており、時として社団の名において権利を有し、又は義務を負うがごとき外観を生じる。このような場合に権利・義務関係をいかに処理すべきかが問題とされる。ここでは権利能力なき社団について、①成立要件と内部関係について②財産関係について③債務および責任、構成員の責任について分けて論じる。
成立要件と内部関係について
権利能力なき社団の一般的成立要件としては「団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産管理等団体としての主要な点が確定している」ことで...