・課題
X会社の使用人Aは、Y会社の物資部繊維課洋装品係長Bとの間で、スラックス等を総額5000万円で売り渡す旨の本件売買契約を締結し、X会社はBの指示に従い、売買契約の履行として、当該商品の一部を訴外C会社に引き渡した。X会社はY会社に当該商品の代金を請求したが、Bが本件売買契約を締結する代理権を有していなかったので、Y会社は支払いを拒んだ。X会社の請求は認められるか。
Y会社は、Bが本件売買契約を締結する代理権を有していなかったことから、X会社からの代金支払い請求を拒絶している。ここで、BはY会社の物資部繊維課洋装品係長である。
そこで、X会社としては、Bは会社法14条1項に規定する商業使用人に該当することを理由に請求の履行を求めることが考えられる。
会社法14条は、商業使用人のある種類または特定の事項について委任を受けた事項に関する包括的代理権を定めた規定であり、商業使用人とは、部長・課長・ 係長などの肩書を有する使用人をいうと解されているからである。
ここで、会社法14条の委任について、法律行為の委任(代理権授与)を必要とするのか、事実行為(取引の勧誘、契約条件の交渉事務等)の準委任で足りるのか、という見解の対立がある。
前者の見解は、会社法14条の規定の沿革から、ある事項について代理権を与えられた者の代理権の範囲を法定する規定と解することができるとの理由から導き出される。
この見解に対しては、相手方は、代理権授与を調査しなければならず、取引の安全・迅速を害するとの批判が成立する。
後者の見解は、代理権授与を要件とすると、相手方が代理権の...