1.ローンカードの交付について
Aは、消費者金融会社の係員を欺いて自らをBと思い込ませ、B名義のローンカードの交付を受けた。この行為が詐欺罪(246条)に該当しないか問題となる。
ここで、詐欺罪の構成要件は、①人を欺いて相手方の錯誤を惹起し、②財物を交付させたことである。その保護法益は、他人の財物・財産上の利益である。
それでは、ローンカードは詐欺罪でいう「財物」に該当するであろうか。
例えば、旅券の交付は、財産的利益の付与を与えず、「財物」に該当しないとするのが判例のため、ローンカードにおいてもその財産的価値を有するかどうかが問題となる。
ここで、ローンカードは、それ自体として所有権の対象となり得るものであるのみならず、金銭の借入をなしうる点において財産的価値を有するものであるから、ローンカードは財物と解する。
次に、詐欺罪における詐欺行為とは、一般人を財物・財産上の利益を処分させるような錯誤に陥れる行為をいう。本事例では、Aは係員を欺いてローンカードを交付させているため、詐欺行為があったと言える。
さらに、詐欺罪の保護法益は、他人の財物・財産上の利益であるため、詐欺罪が成...