放送メディア論レポート

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    放送メディア論レポート
    「最近の北朝鮮のニュースの傾向と問題点の分析」
    14330600765 北川 淳
     私が興味を持った北朝鮮に関する最近のニュースは、2007年7月24日の毎日新聞朝刊「万景峰号、点滴薬事件」である。記事の内容は、以下である。
     処方せんなしに医薬品を売買したとして、警視庁公安部に薬事法違反(無許可販売)容疑で書類送検され、不起訴(起訴猶予)となった東京都世田谷区、在日朝鮮人で元飲食店経営、朴順粉(パクスンブン)さん(75)が取材に応じ「組織的背景は全くない」と北朝鮮の関与を疑った捜査を批判した。
     朴さんは06年5月、貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」に、処方せんなしで点滴薬「強力モリアミンS」(200ミリリットル)60パックと肝臓疾患薬「強力ネオミノファーゲンC」4箱を持ち込もうとして新潟税関に見とがめられた。点滴薬5パックのみ持参を認められ、渡航した。
     この点滴薬を巡っては、神奈川県警が同6月、医薬品販売会社社長が8100パックを北朝鮮系貿易会社に処方せんなしで販売したとして同容疑で書類送検(昨年8月、起訴猶予)するなど、組織的な背景が疑われた。警視庁公安部は同11月、朴さんの自宅と薬を販売した近所の耳鼻科病院、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)東京都本部などを捜索した。
     薬について、朴さんは「私は甲状腺がんの手術を受けるなど体が弱く、訪問中の体調管理と、肝炎になった元医師の次男にあげようと思った。その3年前にも持参したが、薬事法改正(05年4月)で持ち出しができなくなったことを知らなかった」と説明した。
     朴さんの夫(84)が科学者らでつくる「在日本朝鮮人科学技術協会」(科協)の顧問だったため、北朝鮮軍関係の指示があった可能性が指摘されたが「30年ほど前に、名目上顧問になっただけ。93年に体を悪くして全く会合にも行っていない」と話し「総連施設を捜索したいがために、私を利用したのではないか」と捜査を批判した。
     捜索の後、自宅には「出て行け」「歩くと殺すぞ」など嫌がらせの電話が20本近くかかった。近くの喫茶店に「この町には北朝鮮のスパイがいる」と話す中年女性たちがいて、あぜんとしたこともあったという。しかし「『町から出て行こうか』と弱音を吐いた時、近くの日本の人たちが『私たちが守るから』と声を掛けてくれ、救われた」と振り返った。
     警視庁は今年6月初め、朴さんと薬を販売した医師を書類送検したが、東京地検は同下旬「組織的要請に応えたという認定はできなかった」と、起訴猶予処分とした。
     事件を巡っては、朝鮮総連東京都本部などが「捜索は政治的弾圧」などとして、国と都に1250万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
     23日の第2回口頭弁論で都側は「捜索には必要性があり、事件との関連性も疑われた」と反論している。
     このニュースを読んで、私は最近の北朝鮮に関するニュースの内容は、メディアが「北朝鮮の人は全て悪い」と決め込んで(またはどこかでそういう意図を含んで)報道しているのではないかと感じた。
     昨年11月、万景峰号で北朝鮮に点滴薬などを輸出しようとした在日朝鮮人の女が、この薬品を不正に入手していたとして、警視庁公安部は27日、薬事法違反容疑で朝鮮総連施設などへの家宅捜索を始めた。とニュースで報道された。さらに別のニュースでは、この女性が北朝鮮の組織と関与し、センセーショナルな見出しをつけて大々的に報道し、テレビも「有識者」を登場させて「生物兵器を生産する危険な国」の指令を受ける「危険な人物」という誤ったイメージを流布した。当時のメディアは何も事実検証をせずに、ただ警察の「薬事法違反」という発表を受けて、半朝鮮・民族排他の風潮を煽った。実際にこのニュースをいくつか視聴したが、このニュースだけを見ると私も「この在日朝鮮の人は法律を無視して危険な薬を日本に持ち込んでいたのか」と思った。こう思わざるを得ない報道の仕方だったと記憶にある。
    そして今年、不起訴処分となると当時あれほど大騒ぎし、報道合戦を繰り広げたメディアは、あまり大きく取り上げていない。何も罪のない高齢の女性を犯罪者扱いし、あたかも「北のスパイ」かのように報道したメディアの無責任さには憤りすら感じる。と同時に、ニュースの報道のされ方一つで自分の考えが左右されてしまうこともあるということを身をもって感じ、メディアの恐ろしい一面を知った。
    記事に登場する朴さんはただ体の弱い自身と次男のために薬を持参しただけで、組織的な関係は何もなかった。それをメディアが最近の北朝鮮情勢から、このニュースは話題性を獲得できると踏んで、このような報道に繋がってしまったのではないかと思う。
    今回のニュースで明らかになった問題点は二つある。一つは北朝鮮を不当に扱い報道するメディアと、ニュースを受け取る私達自身の問題である。メディアの報道が悪い。と一方的に非難するのは簡単だが、私はそのメディアの報道に操作された、視聴者の一人であったということを忘れてはならない。記事にあるような地元住人の嫌がらせや噂話を自分がしていたかもしれない。今後は、メディアのニュースを受け取る側もそれが正しいかどうかを判断する力が一層必要だ。しかし、そのような力を持っていたとしても、判断材料が無くてどうしてもメディアの報道により考え方を決め付けられる時はどうしたらいいのだろうか。それは正直言ってどうしようもないのかもしれない。今回のようなケースでは、事件当時に視聴者が真実を見抜くことは非常に難しいように思う。テレビでは専門家が意見しているのだから、例えメディアのやり方だというのがわかっていたとしても、それが正しいと思ってしまう。しかし、それでも自分の中で絶えず批判し、時には受諾することが大事なのではないか。
    総括して間違いなく言えることは、何の根拠もなしに、無罪の、それも高齢の在日朝鮮人女性を「薬事法」に違反したと騒ぎ立てた日本のメディアの偏向報道は改めるべきだ。別の記事によると国賠訴訟を担当している北朝鮮総連側弁護士は、「このような『犯罪』ねつ造が1回でも認められれば、今後は在日朝鮮人に対して何をしても許されるという風潮になる。裁判を通じて、日本政府と警察当局による政治弾圧の違法性を明らかにして、再発防止の環境と条件を整えなければならない」と強調した。このような事件が再発しないことを願う。

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