第一設題 奈良時代の仏教の特質を論ぜよ。
序
六世紀前半に我が国に伝えられた仏教は、当初天皇家や有力豪族を中心に受容されてきた。蘇我氏を中心に地歩を固めていった仏教が聖徳太子の活動により飛躍的な発展をとげることとなった。仏教は、中央集権の新しい国家体制の中、寺院を建立し経典を供養することで、国家が守護されるとの思想(鎮護国家)の一翼を担うようになり発展していった。本論においては、(鎮護国家仏教の発展)と(南部六宗の発展)を中心に奈良時代の仏教の特質にせまっていくこととする。
本論
一.鎮護国家仏教の発展と東大寺建立
大化の改新の一連の改革の中で、「仏教の興隆を願う。そのために寺院には財政援助をする」といった内容の「仏法興隆の詔」が下され、蘇我馬子によっておし進められてきた仏教を、これからは天皇が代わって行うという風になっていった。そして律令国家としての天皇中心中央集権国家体制が確立され、仏教は国家によって保護され発展していった。天武天皇は大官大寺(後の大安寺)を建て、持統天皇は薬師寺を建て、国家の守護を目指した。そして奈良時代に入って、聖武天皇のと...