《『ヴィクトリア女王―世紀の愛―』考察》
本作品を鑑賞して何よりも感じたのは、この映画がラブロマンスというジャンルに分類されるものではないのではないか、ということだった。確かにストーリーの主眼はヴィクトリアとアルバートが結ばれる点にある。しかし本作品を観終わった後、恋愛物語であるかのような宣伝や「世紀の愛」という副題に違和感を覚えた。なぜなら、私は本作品から成長の物語という印象を受けたからである。幼少より抑圧されてきた少女が“ゲームのルールを学び”政略結婚によって幸福を手に入れ、自立した一人の大人に成長を遂げる物語、それが本作品の骨子なのではないだろうか。実際、「世紀の愛」という副題は邦題に独自のもののようで、原題は“Young Victoria”である。やはり原題からも成長物語の要素が少なからず含まれているように思われる。そうした本作品においては特に“自立”が重要なテーマになっている。そしてこのテーマを劇中において表現するヴィクトリアを演じるエミリー...