法律行為の取消しと登記
1.判例・通説
AB間の不動産譲渡契約が取消された目的不動産がCに転売されている場合のAC間の法律関係に対する問題について、判例では一般に2つに要約できるものとしている。
①Aは、目的不動産につき取消し前に利害関係を有するに至った第三者Cに対しては、96条3項の適用がある場合を除いて、登記なしに取消しの効果を対抗できる。
②Aは、取消し後に初めて利害関係を有するに至った第三者Cに対しては、登記なくして取消しによる所有権の復帰を対抗できない(96条3項、取消しの遡及効を制限する趣旨であり取消し後の第三者については適用にならない)。
学説においても、この判例理論と同旨を説く見解が通説的地位を占めてきた(我妻、末川、舟橋など)。
判例・通説の実質的な理由は、取消しの効果を第三者に対抗するについて対抗要件の具備を不要とするならば、Aは「一度其の行為を取消したといふ事だけで、登記や占有を回復することなしに、永遠に第三者に其の所有権の回復を対抗し得る事となって、法律が対抗要件を規定してゐる趣旨は全然没却される結果を招来し、取引の安定を害すること」(末川)この上ない、とする...