A 津地鎮祭事件とは、三重県津市の市立体育館の起工式が行われた際、神職の神式によって地鎮祭を行い、その費用を津市市長が公金から支給した。それが憲法20条3項(政教分離)に反しないかが争われた。第一審は合憲、第二審は違憲の判決がくだされたため、最高裁判所へ上告された。
争点となるのは政教分離原則の意義と、地鎮祭への公金支出は合憲であるかである。政教分離については、完全分離説と限定分離説が対立している。通説である完全分離説は、国家と宗教との徹底的な分離を要求し、国家が宗教にかかわり合う可能性を極力回避すべきだという。これに対し、限定分離説をとる津地鎮祭最高裁判決の多数意見は、「国家が宗教との関わり合いを持つことを全く許さないとするものではなく、宗教との関わり合いをもたらす行為の目的および効果に鑑み(中略)、相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものである」(最大判1977・7・13民集31・4・533)と判示し、津市の公金による神式に即した地鎮祭を合憲と判断している。さらに、津地鎮祭最高裁判決(多数意見)は、アメリカの判例理論を借用して日本的な目的効果論を展開...