目的
心臓および循環器系に影響する身体の異常の有無を知る手がかりとする.
必要物品
①血圧計,②聴診器③メモと鉛筆,④アルコール綿
ポイント
血圧の生理的変動因子(食事,排泄,運動,興奮,気温など)の影響を取り除く
点検した血圧計,聴診器を用いる
測定部位に合った幅のマンシェットを選ぶ
マンシェットを正しく巻く
測定時の加圧・滅圧は徐々に行う
禁忌・注意点
①気温による血管の収縮・拡張を避けるために室温を寒くないよう,また暑すぎないよう室温を20℃前後に調整する.
②10~15分安静にしてから測定し,体位や労作による変動を避ける.
③マンシェットの幅は,測定部位の円周40%を目安とする.
④麻痺などのある場合は,健側で測定する.
⑤連続して測定するときは,条件を揃える(測定部位,体位,時間など).
⑥測定部位と心臓と血圧計の0点を同じ高さにし,水銀柱が垂直になるように置く.
⑦マンシェットの中のゴム嚢の中央が測定する動脈の真上にくるように巻く.
⑧一般にマンシェットは,右上腕で測定するようにできている.左上腕で測定する場合は,ゴム管が聴診器を当てるのに邪魔となるのでマンシェットを巻くときはゴム管が上にくるようにして当てる.
⑨コロトコフ音が聞こえ始めてからコロトコフ音の第Ⅱ相の間でコロトコフ音が消失する場合がある.これを聴診間隙といい,高血圧の場合に多くみられる.聴診間隙がある場合は,触診法を併用して収縮期血圧を確認する.
Ⅰ.聴診法による血圧測定
1.必要物品を準備し,点検する
①血圧計の点検をする
●水銀止めコックを開け,0点に水銀があるか確かめる
●ゴム管をゴム球,水銀柱に接続し,ゴム球のネジを閉じ加圧する
●水銀止めコックを開け,0点に水銀があるか確かめる
●ゴム管をゴム球,水銀柱に接続し,ゴム球のネジを閉じ加圧する
②聴診器の点検をする
●イヤピースを耳に入れ,膜面を軽く叩く
○スムーズに加圧できないときは,空気漏れがある
○ゴム球のネジ締めの不十分,接続の不十分,ゴムの破損などが考えられる
2.患者に測定することを説明する
●目的・方法を説明し,環境や体位を整える
○精神の安定を図る
3.患者を仰臥位あるいは座位にする
●座位で測定する場合は,肩をおとす
○測定部位と心臓の高さを同じにする
4.衣服の袖をたくし上げる
●衣服の袖を上げると上腕を圧迫する場合は,片袖を脱ぐ
○圧迫により上腕動脈の血流が減少し,血圧は低下する
5.マンシェットを上腕に巻く
●マンシェットを折りたたみ両手で空気を追い出す
○マンシェット中のゴム嚢に空気が入っていると圧力が不均衡になる
●マンシェットの中のゴム嚢の中央が上腕動脈の真上にくるように巻く
○上腕動脈は腋窩中央から上腕内側面を走っている.ゴム嚢の中央をそれに合わせ十分に圧迫し,血流を止める
●マンシェツトの下縁が肘部より約3cm上にくるように巻く
○聴診器を当てる場所をとり,マンシェットに触れ生じる雑音を避ける
●マンシェットは指が2本入る程度に巻く
○緩く巻くと加圧面積が減り血圧が高くなり,堅く巻くとあらかじめ圧迫した状態となり血圧が低くなる
6.水銀柱とゴム球をマンシェットのゴム管に接続する
●ゴム管が交差しないようにする
○雑音による血管音の開き取りにくさをなくす
7.血圧計の水銀コックを開く
●水銀柱が垂直である
○心臓の高さが測定部位より高いと血圧は低くなり,低いと血圧は高くなる
●測定部位と心臓の高さが同じである
●ゴム球のネジが閉まっていることを確認する
8.肘窩のやや上内側に指を当て,上腕動脈の拍動する部分を確認し,その部分に聴診器を当てる
●聴診器の膜型の中央を当てる
○血管音のような高音は,膜型の方がベル型より開きやすい
9.ゴム球を利き手にもち,ゴム球の弁を閉じ,空気を送る
●前回の測定値より20~30mmHg加圧する
○必要以上の緊迫は血圧を高くする
○初めて測定したり平素の血圧値がわからない場合は触診法を先に行う
10.ゴム球の弁を開き,水銀の目盛りが追える速さで徐々に空気を出す
●1拍動1目盛り(2㎜Hg)の臓で徐々に減圧する
○血管音は心拍動に対応して発生するので素早く減圧すると血管音を聞きとれない
11.初めに血管音の聞こえ始めた示度を読み収縮期血圧とする
●スワンの第1点の示度を読む
○心臓の収縮によって大動脈に拍出されたが圧追された部位の血管を通り始めると音が聞こえる
●水平な視線で目盛りを読む
○誤差をなくす
12.さらに徐々に空気を抜き,血管音が開こえなくなった示度を読み,拡張期血圧とする
●スワンの第5点の示度を読む
○心臓の拡張により血液の拍出が止まると血管音は聞こえなくなる
●音が聞こえなくなることがなく目盛り0mmHgまで聞こえた場合は,スワンの第4点の示度を読む
○血管の弾性その他により第5点の音の聞こえなくなるところがない
13.拡張期血圧を確認したら,ゴム球のネジを開き速やかに空気を抜く
●ゴム球のネジを全開にし、空気を抜く
○長時間の圧追は,静脈のうっ滞を招き,患者も痛みを訴え苦痛である
14.マンシェットをはずし,対象の衣服の袖を整える
○圧迫を取り除き,安楽を図る
15.読みとった血圧の値をメモする
○測定値を忘れないため
16.血圧計の中にマンシェットとゴム球を納める
●ゴム管の接続をはずし,マンシェット中のゴム嚢の空気を抜く
○収納をきちんとし,破損するのを防ぐ
●血圧計を水銀槽の方へ傾けて,水銀止めコックを閉める
○水銀切れや水銀漏れを防ぐ
17.聴診器の採音部とイヤピースを拭く
●アルコール綿で拭く
○感染予防
18.血圧乱聴診器を所定の場所に片づける
19.記録をする
●血圧値は,収縮期血圧値/拡張期血圧値を記録する
Ⅱ.触診法による血圧測定
1.必要物品を準備し,点検する
①血圧計の点検をする
●水銀止めコックを開け,0点に水銀があるか確かめる
●ゴム管をゴム球,水銀柱に接続し,ゴム球のネジを閉じ加圧する
○スムーズに加圧できないときは,空気漏れがある
○ゴム球のネジ締めの不十分,接続の不十分,ゴムの破損などが考えられる
2.患者に測定することを説明する
●目的・方法を説明し,環境や体位を整える
3.患者を仰臥位あるいは座位にする
●座位で測定する場合は,肩をおとす
4.衣服の袖をたくし上げる
●衣服の袖を上げると上腕を圧迫する場合は,片袖を脱ぐ
○圧迫により上腕動脈の血流が滅少し.血圧は低下する
5.マンシェットを上腕に巻く
●マンシェットを折りたたみ両手で空気を迫い出す
○マンシェット中のゴム嚢に空気が入っていると圧力が不均衡になる
●マンシェットの中のゴム嚢の中央が上腕動脈の真上にくるように巻く
○上腕動脈は腋窩中央から上腕内側面を走っている.ゴム嚢の中央をそれに合わせ十分に圧迫する
●マンシェットの下縁が肘部より約3cm上にくるように巻く
○緩く巻くと加圧面積が減り血圧が高くなり,堅く巻くとあらかじめ圧迫した状態となり血圧が低くなる
●マンシェットは指が2本入る程度に巻く
6.水銀枕とゴム球をマンシェットのゴム管に接続する
●ゴム管が交差しないようにする
○雑音による血管音の聞きとりにくさをなくす
7.血圧計の水銀コックを開く
●水銀桃が垂直である
○心臓の高さが測定部位より高いと血圧は低くなり,低いと血圧は高くなる
●測定部位と心臓の高さが同じである
●ゴム球のネジが閉まっていることを確認する
8.橈骨動脈を触診する
●橈骨動脈の拍動を示指・中指・薬指で触診する
○動脈に沿って当て,拍動をしっかり捉える
9.ゴム球を利き手にもち,ゴム球の弁を閉じ,速やかに空気を送る
●脈拍が触れなくなったらさらに20~30mmHg加圧する
○血流を完全に止めるが,加圧しすぎるとうっ滞を招き血圧は上昇する
10.ゴム球の弁を開き,水銀の目盛りが追える速さで徐々に空気を出す
●1拍動1目盛り(2mmHg)の速度で徐々に減圧する
○速く減圧すると拍動を捉え損ない,低い血圧値となってしまう
11.最初に脈拍が触れた値を読み収縮期血圧とする
●最初に脈が触れた示度を目の高さで読む
○誤差をなくす
12.収締期血圧を確認したら,ゴム球のネジを開き速やかに空気を抜く
●ゴム球のネジを全開にして空気を出す
13.マンシェットをはずし,患者の衣服の袖を整える
○圧迫を取り除き,安楽を図る
14.読みとった血圧の値をメモする
○測定値を忘れないため
15.血圧計の中にマンシェットとゴム球を納める
●ゴム管の接続をはずし,マンシェット中のゴム嚢の空気を抜く
●血圧計を水銀槽のほうへ傾けて,水銀止めコックを閉める
○収納をきちんとし,破損するのを防ぐ
○水銀切れや水銀漏れを防ぐ
16.血圧計を所定の場所に片づける
17.記録をする
●血圧値は,収縮期血圧値を記録し,触診法であることを明示する
○触診法は聴診法に比べやや低い値となるので,測定法を明記する
※その他の知っておくべき事項
①血圧の正常値は年齢,性別などにより異なる.収縮期血圧は,加齢に伴う動脈壁の硬化による仲展の減少で,生理的現象として増加し,拡張期血圧は末梢血管の抵抗によって増加の傾向となる.世界保健機構(WHO)では,正常血圧,境界域,高血圧に区分している.
世界保健機構(WHO),国際高血圧学会(ISH)が,高血圧管理指針(以下WHO-ISH)を1999年に新たに発表している.その血圧分類を示す.
②血圧の生理的変動因子としては,以下のようなものがある.
③血圧測定の値とともに患者の訴え,...