『図画工作科の学習指導において、「楽しい授業」、「わかる・できる授業」は、どのようにして構築されるのか、自分なりに両者を定義づけて述べなさい。その際、手段的美術教育論およびそれへの批判との関連づけを行うこと。』
日本の美術教育は、態度形成と能力形成という相反する教育観の間で揺れ動きながら今日に至っている。学習指導要領をみると、戦後、民主主義国家への改造に向けて実用主義的な教育傾向が打ち出されてから、次第に学習内容は高度化し、効率的で知識伝達を重視した詰め込み教育、つまり能力形成に偏った教育が行われた。しかし、そのような教育では子どもたちが主体的に学ぼうとする態度を育むことはできず、それを省みて、「自ら学ぶ意欲」の育成という情意領域に目を向けた態度形成の教育へと方向転換していった。近年では「新しい学力観」に象徴されるように、情意領域の学力重視の傾向がさらに強くなり、態度形成に編重した教育が行われた。しかしながら、知識・技能伝達の教育を軽んずると、表現したい気持ちはあってもそのための能力がなく、結局美術への意欲がおちこんでしまうということになり、平成10年の改訂では学校教育の枠組みが大き...