佛教大学通信教育部 Z1307教科教育法国語の合格済レポート。設題2『中学3年生の3学期に学習されている「故郷」(魯迅)を詳細に教材分析し、構造や工夫を明らかにしなさい。』
中学3年生の3学期に学習されている「故郷」(魯迅)を詳細に教材分析し、構造や工夫を明らかにしなさい。
はじめに
「故郷」が中学校における物語教材の定番となり得る理由は、その構成の秀逸さにあると考える。本作は、故郷という一つの大きな対象を念頭に置き、過去・現在・未来という時間軸に沿って「わたし」の心情の機微に触れていくことが肝要である。
本レポートでは、Ⅰ章からⅢ章にかけて過去・現在・未来のそれぞれの時間軸に即した詳細な教材分析を行った上で、Ⅳ章で自身の考察を論ずる。
Ⅰ 詳細な分析(過去)
冒頭の部分で『これが二十年来、片時も忘れることのなかった故郷』とあるように、「わたし」にとっての過去の故郷とは、美しい思い出の象徴であり、当時の「わたし」の生活振りや登場人物の呼称を変化させることによって、この美しい思い出がより一層際立つような工夫がなされている。
例えば、『家の暮らし向きも楽で、わたしは坊っちゃんでいられた。』という表現から当時の「わたし」の生活振りに関してはそれなりに裕福であったことが窺い知れるし、「豆腐屋小町」と呼ばれていた楊おばさんの白粉を塗った華で商売が繁盛して...