憲法論文答案練習 条約と国内法

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    資料の原本内容

    憲法論文答案練習
    ~条約と国内法~
    【問題】
    条約はいかに国内で妥当するか。
    【考え方】
     ・・・条約は国際法の法形式であるため、条約締結国で以下に妥当するかは、各国の憲法体系に委ねられている。
    <見解>
     ①条約にそのまま国内法的効力を認める立場
     → 明治憲法下での沿革、憲法98条2項で条約を誠実に遵守する旨定めていること、憲法73条3号で「国会の承認」が要求されており民主的コントロールが及んでいること、法律等と同様に「公布」(憲法7条1号)が要求されていること等を根拠とする。
     ②そのままでは国内法的効力は認められず、国内法的効力を認めるには、いちいち立法措置(いわゆる「変形」)が必要であるとする見解
    ・国際法と国内法の関係
    1)二元論
     ・・・妥当根拠を全く異にする別個の法秩序であるとする見解
    2)一元論
     ・・・両者が一個の統一的法秩序を構成しているとする見解
      → ①国際法を国内法に委任する上位の秩序とみる立場(国際法優位説)
        ②国際法を国内法に委任された法秩序であるとみる立場(国内法優位説)
    3)折衷説
      ・・・両者が別個の法秩序であることを認めながら、国際法の国際法的効力と国内法的効力を分け、国際法が国内法的効力を有することを認める立場
     ※ 国内法と国際法との関係に関する議論と条約の受容方式との関係については、全く別の議論であるとする見解も存在する。
    【答案例】
     本問は、要するに、わが憲法の下で、条約がそのままで国内法的効力を有するのか。それとも、条約の国内実施には、いちいち立法措置(いわゆる「変形」)が必要であるのか、という問題である。
     そこで、思うに、もともと、明治憲法下でも、条約は、そのまま国内法として通用するとされてきたが、現行憲法でも98条2項は、「条約を誠実に遵守する」旨定めているし、また、条約の締結には、「国会の承認」(憲73条3号)が要求されており、民主的コントロールが及んでいるといえる。のみならず、条約は、法律等と同様に公布を要するものとされているのである(憲7条1号)。
     したがって、私は、わが憲法は条約が公布されることによって、当然に、国内法的効力を有するに至ることを認めていると考える。もっとも、だからといって、すべての条約がそのままの形で国内法上実施されるわけではない。そのままの形で国内法上実施されるのは、自動執行力を有する条約であって、抽象的一般的理念を定めたに過ぎない等で自動執行力を有しない条約は、それが国内で実施されるためには、別途、法律の定めが必要である。
    ~条約と憲法~
    【問題】
     憲法と条約との形式的効力における優劣について論述せよ。
    【考え方】
     ・・・条約が国内法的効力を有するとなれば、当然、憲法と条約とが矛盾抵触しうることになるため、両者の形式的効力の優劣が問題となる。
    → 1)条約優位説
       ・・・前文等の定める国際協調主義、憲法98条2項が条約を誠実に遵守することを定めていること、憲法98条1項、81条において条約が除外されていること等を根拠として、条約が優位するとする見解
      2)憲法優位説
       ・・・条約締結権は、憲法により認められた国家機関の権能である以上、自らの権能の根拠となる憲法を変更しえないはずであること、条約優位説によると、より容易な手続で事実上憲法改正が可能となってしまうこと等を根拠として、憲法が優位するとする見解。
    【答案例】
     憲法と条約のどちらが、その形式的効力において優位するのか。
     この点、わが国が戦前、条約を無視し戦争に陥った反省に基づき、条約優位説が平和主義に資するとして、国際協調主義および憲法98条2項、81条の文言を重視して条約が憲法より上位にあるとする見解もある。
     しかしながら、国際協調主義といえども憲法の一基本原理にすぎず、他の憲法の基本原理すべてに優越するものではない。また、98条2項の規定については、有効に成立した条約の国内法的効力を認めるにとどまり、条約が憲法に優位する旨を規定したものではなく、81条も条約がわが国のみの意思で内容を決定できない性格から、別に取り扱っているに過ぎないと考えることができる。さらに、条約が優位すると考えると、より簡単な手続で憲法が改正される結果となり(憲60条・憲61条)、国民主権主義(前文・1条)の見地より憲法改正については厳重な手続を定めている(憲96条)憲法の趣旨が没却されかねないし、そもそも憲法の授権に基づいて成立した条約が憲法に優越するというのは法理論的に矛盾であると言わざるをえない。
     そこで、現在の国際社会において、条約が憲法に優位するほどの国際法秩序が未だ存在していないことも考慮して、少なくとも現在においては、その形式的効力において憲法が条約に優位する(憲法優位説)と考える。
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