白居易の「長恨歌」の『源氏物語』における役割について
はじめに
白居易は中唐を代表する詩人であり、多作な詩人として有名である。その多くの作品は中国に限らず、この日本でも『枕草子』に『白氏文集』が登場し、『源氏物語』が白居易の「長恨歌」から影響を受けていることなどから、古来より本国で広く愛されてきたことが分かる。
そこで、本レポートでは、まず長恨歌の概要について述べ、実際に白居易の「長恨歌」が源氏物語において果たしていた役割のうち二点に焦点をあて、その二点について詳しく述べたい。
長恨歌について
長恨歌は唐の玄宗皇帝が愛妃楊貴妃をしのぶ故事にもとづく「感傷」の詩である。玄宗は楊貴妃を深く愛し、そのために国政が乱れて安禄山の反乱を引き起こす。玄宗は都から逃亡、途中でやむなく貴妃を斬る。乱後、都に戻った玄宗は、痛恨の中に貴妃を慕い、方士をあの世に遺して遺愛の品を手に入れるが、恨は長く尽きない。白居易はそのことを歌う 。長恨歌は平安時代の貴族にとって基礎的な教養であった。紫式部の「源氏物語」や清少納言の「枕草子」、松尾芭蕉の「奥の細道」、さらに夏目漱石「草枕」などにも長恨歌からの引用がある。...