『空隙率』について、ゼロから始めて国家試験まで到達する(PDFに変更、読みづらいところを修正しました)
空隙率
このレポートは薬学部の学生および薬剤師国家試験を受ける方で、特に『空
隙率』が苦手な人に向けて書いたものです。
国家試験対策だけでなく、大学の試験対策にも活用してみてくださいね。
じゃあ早速、空隙率についての講義を始めよう。次の問題を見てくれ。単純
な問題だけど、基本的な言語の意味を覚えるにはいい問題だと思うよ。
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例題 1
真密度 1.6g/cm3 の粉体 10.0g を断面積 1.5cm2 の円筒に静かに充填した
ところ、高さが 8.0cm となった。この粉体の空隙率を求めよ。
10.0g
10.0g
いきなり出てきた『真密度』と
いう言葉だけど、
8cm
密度には“真”とか“そうじゃ
ない”密度があることを知って
るかな。
A
B
今からこの真密度という言葉を、必要となる前提知識に触れながら勉強しよう。
A は、ただ粉末をパラパラと落としてふり積もっただけだから、想像しただ
けでもスカスカだなーって思うでしょ?それに対して B は、押しこんで押し込
んでもうそれこそほんの少しの隙間すら存在しないぎっしりと詰まった状態だ。
この 2 つの状態は、見た目の大きさ(体積)は全然違うけどどちらも同じ重
さだよね、だって粉末が増えたり減ったりしてないんだから。
よって左の粉末の体積のことを『みかけの体積』と言う。もちろんこの粉末
の『真の体積』(すなわち B の体積!)にまだ到達してない体積という意味で、
みかけという表現を使っているんだ。
この『真の体積』と『みかけの体積』にはある重要な違いがある。それを次
のポイントにまとめておこう。
空隙率の理解 ポイントその1
真の体積はたった一つ
みかけの体積はいくらでも存在するが、
真の体積は唯一、たった一つしか存在しない
みかけ
真
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これは言われてみれば当たり前のことでのことで、
『みかけの体積』ってのは
ようするにスカスカでまだ押せば小さくできる状態のことだよね。最終的に B
(真の体積)にたどり着く途中の状態は、全部みかけの体積だね。
ギュギュギューッ
『真の体積』は
この状態ただ1つ!
A1
B
ギュギューッ
ギュッ
トントン
A2
トントン
A3
パラパラと粉末が降り積もっただけの A1 を軽くトントンと地面に打ち付け
るだけでも A2 になるし、さらに丁寧にトントンすればもう少し実がつまって
A3 になるよ。
でも最終的に、おもっクソ押しこんでほんの少しの隙間すらまったく存在し
ない状態にしたら当然 B に落ち着くよね。これこそが『真の体積』であり、
『み
かけの体積』との決定的な違いなんだ。
さてこのレポートを見てくれてるあなたと一つ約束事を決めよう。
この A と B のような関係の図を、『みかけと真の関係図』
また A と A のような関係の図を、『みかけとみかけの関係図』
と呼ぶことにするよ。大学の講義で使う製剤学の教科書にこんな言葉は出てこ
ないけど、空隙率の理解やその問題を解くうえでとても便利な図だとあとで実
感できるよ。
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ところで最初説明したかったのは『真密度』と『そうじゃない密度』とかだ
ったんだけど、別に忘れたりしてないからね!ここまできたらもうわかっちゃ
うかもしれないけど、これも一応ポイントとしてまとめておこうね。
空隙率の理解 ポイントその2
みかけの密度と真密度
『みかけの密度』とは、『みかけの体積』と『質量』から求められる密度のこと、
『真の密度』とは、『真の体積』と『質量』から求められる密度のことである。
『そうじゃない密度』ってようするに『みかけの密度』のことだね。
じゃあ実際に次の補題で、みかけの密度と真密度を求めてみようか。
補
題
下の『みかけと真の関係図』より、それぞれの密度を求めよ。
質量
10g
質量
10g
体積
50cm3
体積
20cm3
A
B
密度のイメージと定義は大丈夫?
イメージはつまり具合、密度の高いみかんは同じ大きさでもギュッと実がつま
っておいしそうだよね。
定義はこれ、密度=重さ/大きさ
重さを大きさで割れば、同じ大きさあたりの重さがわかるよね、これが密度だ。
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【補題
解説】
同じ粉末だから同じ 10g で、左の筒は『みかけの体積』だね、よって求めら
れるのは『みかけの密度』だ。
『みかけの密度』
=
10g /
50cm3 =
0.2g/cm3
次に右の筒は『真の体積』だね、もちろん求められるのは『真密度』だよ。
『真密度』
=
10g /
20cm3
=
0.5g/cm3
それぞれの密度を比べてごらん、みかけの A(0.2g/cm3)より真の B(0.5g/cm3)
のほうが、ギュッと中身がつまっているのを感じてほしい。
ここまでで、4つのキーワードは大丈夫かな?
『みかけの体積』
『真の体積』 『みかけの密度』
『真密度』
ではいよいよ、空隙率について理解していこう。
といっても新しく学ぶことはほとんどないよ。空隙率とはようするにすきま
の割合というだけの話なんだ。
空隙率の理解 その3
空隙率とはすきまの割合である
みかけと真の関係図
空隙率 ε=
すきまの体積(V すきま)
みかけの体積(V みかけ)
V みかけ
V すきま
V真
すきまの体積(V すきま)=みかけの体積(V みかけ)-真の体積(V 真)
・・・(*)
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よって、空隙率は以下のように書くこともできる
V みかけ-V 真
空隙率 ε=
空隙率の式に(*)を代入
V みかけ
V真
= 1 -
V みかけ
空隙率は、みかけの体積と真の体積の
2つがわかれば求まるのだ
どうかな?意味がわかったうえで式を見ると、きっと当たり前に感じられる
と思うんだ。それが『公式を理解した』という状態だよ。
じゃあ実際に使ってみようね、ようやく例題1を解いていこう。
例題 1
真密度 1.6g/cm3 の粉体 10.0g を断面積 1.5cm2 の円筒に静かに充填した
ところ、高さが 8.0cm となった。この粉体の空隙率を求めよ。
【例題1
解説】
いつもそうだけど、これから空隙率の問題を考えるときは、いつも『みかけ
と真の関係図』を書いて考えるクセをつけてね。
なるべく図示して、情報をかみ砕くことでいろんなことに気づけるアンテナ
が育っていくよ。この問題に限らず計算問題はすべて、だまされたと思って『図
示する』というクセを身につけてほしい。
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『みかけと真の関係図』
さて、空隙率を考えるんだからいつも通り
『みかけと真の関係図』をまず書こう。
みかけ
真
そして空隙率を求めるのに必要なアイテム
は『みかけの体積』と『真の体積』の2つだ。
ようするにこの図の2つの体積を求めればいいって事だね。
問題文よりみかけの体積は、
立体の柱の体積=底面積 S×高さ h
1.5cm2 ×8.0cm=12cm3
h
じゃあ真の体積は?わかんない?
S
h
S
どんな計算問題でもそうだけど、何をしていいかわからなくなったら、
必ず使っていない条件をさがすようにしよう。今回の場合は、
真密度 1.6g/cm3 と
質量 10.0g
の 2 つだ。ここから真の体積を求めよう。
密度の定義はなんだっけ?さっきサラッと流したけどちょっとカッコつけて
書けばこうだよ。
密度(ρ)=
質量(W)
体積(V)
こういう式を見たときに感じてほしいことは、
『3つの情報から出来ているので、2つがわかれば
残り1つの情報が求まる』ということ。
今、真密度(ρ 真)と質量(W)はわかっているんだから、真の体積(V 真)
は求まるはずだよね! ρ 真=1.6g/cm3 と W=10.0g を代入してごらん。
真の体積 V 真=6.25 cm3 と求まるはずだよ。
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よって、みかけの体積=12cm3、真の体積=6.25 cm3 より、
V すきま
空隙率 ε=
V みかけ
V すきま=V みかけ-V 真を代入した
V みかけ-V 真
=
V みかけ
= 1 -
= 1 -
V真
V みかけ
6.25cm3
12cm3
みかけ
真
≒ 0.48
空隙率が 48%ということはつまり、この
みかけの姿の粉体は実はその半分近くが
スカスカの空間だったんだね。
空隙率は 48%
とわかった。
例えば 48%という数字を見たとき、単なる数字じゃなくてその具体的なイメ
ージを浮かべるようにしようね。48%という数字の意味は?『ほぼ半分』とい
う意味だよね。
このように、数字は言葉にできるものだということを感じて欲しい。計算が
苦手な人は今までの経験上、例外なく式や数字をただの記号の羅列にしか感じ
ていない。
だから今日から数字や式を見たら、その意味を言葉にして感じるように心が
けて欲しい。きっといままでと違うものに見えてくるよ。
では次の問題でさらに理解を深めよう。次は実際の薬剤師国家試験からの出
題だよ。
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例題 2(第 91 回 問 167)
)
一定量の粉体試料を底面積 3cm3 の円筒容器に静かに充てんしたところ、高さ
は 10cm となり、その空隙率は 55%であった。次にその粉体の入った容器を
一定の高さから一定の速度で繰り返し落下させてタップ充てんしたところ、粉
体層の高さは 7cm となった。このときの空隙率(%)はいくらか?
じゃあまずは...