精神科リハビリにおける薬物治療について
1.薬物維持療法
精神分裂病や重度感情障害の症状憎悪や再発を最小限に抑えるために薬物維持療法が重要であることは議論がつくされている。ライフ・イベントや高レベルの感情表出といった社会心理学的な要因が再発を誘発することがよくあり、薬物の維持投与による抑制的作用がなければ再発の危険が増すこともよく知られている。したがって心理社会的なアプローチと薬物治療とを組み合わせることによって、最良のリハビリテーション効果が生み出される。この二つの介入方法は、それぞれの役割を補完するものと見るべきであり、拮抗するものと捉えてはいけない。
長期間にわたるマネージメントにおいては薬物の使用は安易に行われてはならない。薬物を処方する医師は、薬の作用、禁忌や副作用を熟知していなければならないし、個々の症状に応じて、リスクと効果のバランスを慎重に評価することが重要である。薬物の種類と用量が適切であるにもかかわらず、障害と苦悩をもたらす症状が持続しているときにこそ、こうした評価が大切である。精神分裂病者の25%が従来型の抗精神病薬にあまり反応しない、治療抵抗性とみられている。このような場合、効果が定かでない、代用治療法に頼ろうとする誘惑に抗しないと障害を増幅させるかもしれない。
維持する薬物の種類や投与量とは別に、投与経路もまた、きわめて重要である。多くの患者にとって経口投与法は注射よりも受け入れやすいという利点がある。しかし、これには服薬継続性の問題と過量服用のリスクが伴っている。経口投与は、体外排出が早く、投与量の調整が自在であると考えられているようであるが、これは誤りである。経口投与で体内に入った抗精神病薬の活性代謝物は、投与中止後も数週間から数ヶ月間は体内に残る。デポ剤は、低用量でより一定した薬物血中濃度を維持し、薬物に対する反応性をより正確に捉えることができる。さらに、デポ剤を投与されている患者は再発しがたいという事実がある。
何年間もうまく症状がコントロールされていた患者の中に、薬物維持療法を中断した後に病気が再発するものがいることが臨床経験から知られている。長期の調査研究に基づいた優れた報告の中で、ジョンソンは、薬物維持療法を必要とする期間は確かでないと結論している。しかしながら最後のエピソードから5年を過ぎた後でも、精神分裂病者の8割が薬を止めると再発している。薬を中止しても大丈夫な2割を判断する基準は見つかっていない。
2.ノン・コンプライアンス(服薬非遵守)
期待していた効果が薬物治療によってみられなかったときに必ずなされる質問の一つは、処方通りに服薬していたかということである。コンプライアンス(服薬遵守)という用語は、受動的に服従するという、あまり好ましくない意味を持っている。処方した薬を納得して続けるかどうかは、主に患者と治療者の関わり方にかかっていて、患者への治療者からの力づけ(エンパワメント)が重要で価値のあるところである。ノン・コンプライアンスの患者がどれほどいるかを調べるのは難しい。外来患者、入院患者においても、また長期間処方の場合でも短期間処方の場合でも、さまざまな医療場面でノン・コンプライアンスが広く報告されている。地域で生活している分裂病者の60%までが、常時ではないが、ノン・コンプライアンスがあると推定されている。
薬物維持療法の持つ予防的意義を考えると、患者が治療に積極的に協力することが欠かせない。そのためには、処方された薬を納得して服用し続けることの大切さを熟知しておくことが重要であ
精神科リハビリにおける薬物治療について
1.薬物維持療法
精神分裂病や重度感情障害の症状憎悪や再発を最小限に抑えるために薬物維持療法が重要であることは議論がつくされている。ライフ・イベントや高レベルの感情表出といった社会心理学的な要因が再発を誘発することがよくあり、薬物の維持投与による抑制的作用がなければ再発の危険が増すこともよく知られている。したがって心理社会的なアプローチと薬物治療とを組み合わせることによって、最良のリハビリテーション効果が生み出される。この二つの介入方法は、それぞれの役割を補完するものと見るべきであり、拮抗するものと捉えてはいけない。
長期間にわたるマネージメントにおいては薬物の使用は安易に行われてはならない。薬物を処方する医師は、薬の作用、禁忌や副作用を熟知していなければならないし、個々の症状に応じて、リスクと効果のバランスを慎重に評価することが重要である。薬物の種類と用量が適切であるにもかかわらず、障害と苦悩をもたらす症状が持続しているときにこそ、こうした評価が大切である。精神分裂病者の25%が従来型の抗精神病薬にあまり反応しない、治療抵抗性とみられている...