山一證券はなぜ潰れたか
山一證券は損益計算書では黒字でありながら1997年に自主廃業した。その理由を考える。
序説:
山一證券が潰れた理由は、簿外債務にある。簿外債務とは、企業の損失を隠蔽するために、損失を子会社などに付け替えるなどして、貸借対照表などの帳簿に記載されない債務のことである。ではなぜ簿外債務が発生したのかを順に追ってまとめる。
1.法人の山一
1986年、当時社長であった横田良男は、前年からの株価バブルを好機と捉え、営業戦略の柱として、法人客を対象とするエクイティ営業を最重点に置くことを決定した。この時、基本認識として商品戦略の項に「株式預かり資産、特金(営業特金)、海外投資家の一任勘定の増大を通じて、法人資金の株式市場への徹底的指導をはかる」ことが明記された。特金とは、特定金銭信託のことで、顧客が信託銀行に資金を預け、売買する有価証券の銘柄や数量を(投資顧問会社のアドバイスを受け)指定して運用するものである。一方営業特金とは、特定金銭信託の形を取りながら、投資顧問会社に代わって、証券会社の営業部門が多額の資金を預かり、自分の裁量で(証券会社が一任されて)運用する場...