グローバリゼーションとは何か?(2)

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    資料の原本内容

    グローバリゼーションとは何か?(2)
    ~ 国家と地域は情報格差にどのように対処しているのか? ~
    グローバル化の進展とともに、先進国と途上国間の情報格差・技術格差がよりいっそう拡大するのではないかという問題提起をしたレポート「グローバリゼーションとは何か?(1)」に続き、このレポートではその格差にどのような対処がなされているのか、またどのような対処が考えられるのかという点を考察していきたい。
    情報格差の拡大の根底には、「ある国や地域が情報機器の入手が経済的に可能かどうかという経済的要因、すなわちOECDやWTO、UNESCOのデータに示されるような経済大国群、発展途上国群、第三世界の国々におけるGDP(GNP)の大きさや生活水準、メディア機器普及率の高さ、大きな国内広告市場といった指標」(武市 2003 P197)というように、経済格差が密接に関わっていると思われる。具体的には、「インターネットに接続するための費用や接続に必要なパソコンの価格も、産業国にとっては一般家庭にも普及できるくらいにまで下がってきたが、途上国からみれば高嶺の花であることに変わりない」(橋元 2005 P108)という現状である。つまり、情報格差を縮小するためには、どれだけ情報へアクセスできる環境を整えていけるかどうかということが鍵になってくる。
    では、この「南北格差を生み出し拡大している世界システムの問題そのものに深く規定された問題」(橋元 2005 P110)である情報格差を解決するために、国家や地域はどのような対処をしているのかを見ていきたい。まず、国家という観点からみると、2000年7月に開かれた九州・沖縄サミットでの、グローバルな情報社会に関する沖縄憲章(IT憲章)で、「南北関係としてのデジタルデバイドに対する国際的に協調した取り組みの必要性」(橋元 2005 P108)が指摘され、その後、「IT憲章にもとづき、G8共同プロジェクトとしてDigital Opportunity Task Forceが発足し、2001年7月のイタリアジェノバサミットにおいてデジタルデバイド解消のための報告書を提出」(橋元 2005 P108)というように、主要先進国間で南北の情報格差を是正するためのコンセンサスはできている。また、より世界的な組織として、「国連環境開発計画(UNDP : United Nations Development Programme)もまたこの問題に積極的に取り組んでおり、九州・沖縄サミットを契機として、Digital Opportunity Initiativeが設置された。UNDPおよびDOIの一連の報告書は、途上国における情報通信技術を活用した経済発展の試み、戦略、課題などを詳しく提示しており有益だ」(橋元 2005 P109)というように国連もこの問題への対処に能動的に取り組んでいる。このように現状は、国家間レベルでの取り組みが中心のようである。
    こうして見てみると、この情報格差の問題は経済格差と密接にリンクしており、経済格差の是正に目処が立たなければ、解決への兆しが見えないような途方もないともいえそうな問題である。そのため、国家間レベルでまず経済格差の解決を図ることが、情報格差解消の前提となると思われる。そこで注目すべきなのは、これまで考えられてきた経済発展のスタイルの見直しである。これまでのスタイルは、先進国から途上国への技術移転において、まずは重厚長大で基礎的な部分を固め、それからゆっくりとその他の産業への技術移転を進めていくというものであった。しかし、従来の経済発展スタイルでは、どうしても情報格差の解消は後回しになってしまう。そこで、上記で記したUNDPの報告書で述べられているように、情報通信技術を活用した経済発展というアイデアを新たな経済発展のスタイルとして実践していく価値があると私は思う。IT産業への技術移転から始め、その次に重厚長大産業への技術移転を進めていくというのは一見逆説的にも思える。だが、現状のままが続く場合、情報格差問題はいつまで経っても経済格差解消という目標と連帯して考えにくく、国家間レベルでの対処が中心のままであろう。しかし、国際社会での競争の波に早いうちから対抗できるような可能性のあるIT産業を先行強化していくことは、国家間レベル中心の対処から、途上国間でまとまってIT産業強化の地域的ネットワークを構成するなどのリージョナリズム的アプローチ、グローバルガバナンス的アプローチが生まれてくる可能性を秘めているのではないかと思う。
    参考文献
    武市英雄・原寿雄 責任編集 2003 ミネルヴァ書房 『グローバル社会とメディア』
    橋元良明・吉井博明 責任編集 2005 ミネルヴァ書房 『ネットワーク社会』
     

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