『不思議の国のアリス』は1865年に刊行されて以来、世界中の子供のみならず、大人たちも魅了してやまない‘ナンセンス文学’の名作である。この物語は、ルイス・キャロルが主人公のモデルとなったアリス・リデルとその姉妹に即興で語り聞かせた話をもとに書かれた。人間の言葉を話す白ウサギの後を追いかけて、深い穴に落ちたアリスがたどり着いた不思議の国。そこではまともなことは起こらない。アリスはそこで体の大きさが変化したり、自分の涙でできた池で泳いだり、生きたフラミンゴとハリネズミでクロケーをしたり、チェシャ猫やグリフォン、ウミガメモドキなどの奇妙な動物と話したりと様々な不思議な体験をする。そして最後に姉のひざの上で目覚め、今までの出来事はすべて夢の中の出来事であったと気づくのである。子供の頃は「変な話だな」としか思っていなかった。だが大学生になった今、再びこの話を読み返して分析してみると新しい見方ができた。
まず注目したのは不思議の国で頻繁に起こる、アリスの身長の変化である。<ワタシヲオノミ>と書かれたびんの中身を飲んで小さくなり、<ワタシヲオタベ>と書かれたケーキを食べて大きくなり、扇子であおいでまた小さくなる。この体の伸び縮みから連想するのは数学の世界でよく見られる拡大・縮小である。なぜ『不思議の国のアリス』にこのような数学的要素が含まれているのか。その答えは簡単に見つかった。作者であるルイス・キャロルはオックスフォード大学の優れた数学者だったのだ。彼は47年間学寮で過ごし、数学と関わって生きた。一見数学とは無関係に思えるこの作品にも、彼の数学的なものの見方は影響していたのだ。秩序がすべての数学の世界にいたからこそ、彼は無秩序な不思議の国の物語を書けたのではないかと思う。また、アリスが不思議の国の住人たちと交わした理屈っぽい会話にも数学的要素は含まれている。
『不思議の国のアリス』について
『不思議の国のアリス』は1865年に刊行されて以来、世界中の子供のみならず、大人たちも魅了してやまない‘ナンセンス文学’の名作である。この物語は、ルイス・キャロルが主人公のモデルとなったアリス・リデルとその姉妹に即興で語り聞かせた話をもとに書かれた。人間の言葉を話す白ウサギの後を追いかけて、深い穴に落ちたアリスがたどり着いた不思議の国。そこではまともなことは起こらない。アリスはそこで体の大きさが変化したり、自分の涙でできた池で泳いだり、生きたフラミンゴとハリネズミでクロケーをしたり、チェシャ猫やグリフォン、ウミガメモドキなどの奇妙な動物と話したりと様々な不思議な体験をする。そして最後に姉のひざの上で目覚め、今までの出来事はすべて夢の中の出来事であったと気づくのである。子供の頃は「変な話だな」としか思っていなかった。だが大学生になった今、再びこの話を読み返して分析してみると新しい見方ができた。
まず注目したのは不思議の国で頻繁に起こる、アリスの身長の変化である。<ワタシヲオノミ>と書かれたびんの中身を飲んで小さくなり、<ワタシヲオタベ>と書かれたケ...