まず初めに、本来のルネッサンスの意味とは、13世紀から15世紀へかけてイタリアに起り、次いで全ヨーロッパに波及した芸術上および思想上の革新運動のことである。現世の肯定、個性の重視、感性の解放を主眼とするとともに、ギリシア、ローマの古典の復興を契機として、単に文学、美術に限らず広く文化の諸領域に清新な気運をひきおこし、神中心の中世文化から人間中心の近代文化への転換が端緒をなした。文芸復興、学芸復興などとも言う。
1830年代の中頃から40年代の中頃にかけて、宇宙の本質、神と人間との内面は究極的に同質のものだとする超絶主義がアメリカで思想的頂点に達した。これは、人間の精神、自我そのものが神であるとし、また自我のつながりを認識する媒体能力として直観を重んじた。理性という枠をとりはずし、一切の経験、悟性に先だつ直観能力、想像力に信頼をよせ、無限者神との合一を求めたのだった。
人間を限りないものに結び付け、これを希求することによって、超絶主義者たちはそこに明るい未来像、世界像を描いていた。だがこのつながりに疑いを抱き、その未来像を否定的に眺めていた者もいた。彼らは理性の枠が取り除かれた世界の背後に、確かに未知なるものが存在することを感じはしたが、これにむしろ脅え、おののきさえ感じていた。ホーソーン、メルヴィルなどがそうである。けれども、超絶主義者たちは、彼らが目には見えないもの、というより目に見えるものの背後にある何かを感じ取っていた。この何か――人間の理性と意志を超えた何かを、彼らがその力強い筆さばきで作品に表そうとした時、その激しくおびただしいばかりのエネルギーの発散がなされた時、アメリカ文学は名実ともに独立し、新しい文芸思潮を生み出すに至ったのである。そしてこの新しい時代の夜明けはヨーロッパ文芸復興の名にちなみ「アメリカ・ルネッサンス」と呼ばれている。
アメリカ・ルネッサンスについて
まず初めに、本来のルネッサンスの意味とは、13世紀から15世紀へかけてイタリアに起り、次いで全ヨーロッパに波及した芸術上および思想上の革新運動のことである。現世の肯定、個性の重視、感性の解放を主眼とするとともに、ギリシア、ローマの古典の復興を契機として、単に文学、美術に限らず広く文化の諸領域に清新な気運をひきおこし、神中心の中世文化から人間中心の近代文化への転換が端緒をなした。文芸復興、学芸復興などとも言う。
1830年代の中頃から40年代の中頃にかけて、宇宙の本質、神と人間との内面は究極的に同質のものだとする超絶主義がアメリカで思想的頂点に達した。これは、人間の精神、自我そのものが神であるとし、また自我のつながりを認識する媒体能力として直観を重んじた。理性という枠をとりはずし、一切の経験、悟性に先だつ直観能力、想像力に信頼をよせ、無限者神との合一を求めたのだった。
人間を限りないものに結び付け、これを希求することによって、超絶主義者たちはそこに明るい未来像、世界像を描いていた。だがこのつながりに疑いを抱き、その未来像を否定的に眺めていた者もいた...