(1)定義
陪審とは広い意味では司法に関与し一定の役割を担うために一般国民から選出された一団の法律の素人で構成された機関を言う。アメリカの陪審制には、素人が職業裁判官とは独立に一定の職分を果たすところに特色がある。
陪審には大別して大陪審と小陪審がある。大陪審は通常23名以下の陪審員で構成され、ある者の刑事訴追を相当とするに足りるだけの証拠があるかどうかを審査する。過半数の決定により起訴が行われることになるので、起訴陪審とも呼ばれる。他方、小陪審は、伝統的には12名の陪審員で構成され、職業裁判官から独立して裁判に関与し、法定に提出された証拠により事件の事実関係を審理し判断する。
(2)小陪審の進め方
裁判所の管轄地域内の有権者(18歳以上の者)の中から無作為で一定の候補者を選出し、その候補者の中から抽選で陪審員が選ばれるが、事件当事者の代理人である弁護士は、選出された陪審員に質問をし、その者に事件に対する偏見や何らかの予断がある場合や利害関係があることが分かった時には、忌避することができる。こうして選出された陪審員は義務を負い、原則としてこれを辞退することはできない。陪審は席に付き公判手続きに臨み、後に裁判官からの説示を受け、評議し評決を下す。評決は原則として全員一致でなければならない。
(3)アメリカにおける陪審制の歴史
アメリカでは植民地時代に陪審制が導入されて以来、これがイギリス本国法の過酷な強制から人民の自由を守る働きをしたこともあり、建国当初から民事・刑事ともに陪審審理を受ける権利は基本的人権の一部であると考えられ、合衆国憲法も陪審裁判を受ける権利を保障している。
「比較法原論」レポート試験
Ⅰ、アメリカの陪審制度について述べなさい。
(1)定義
陪審とは広い意味では司法に関与し一定の役割を担うために一般国民から選出された一団の法律の素人で構成された機関を言う。アメリカの陪審制には、素人が職業裁判官とは独立に一定の職分を果たすところに特色がある。
陪審には大別して大陪審と小陪審がある。大陪審は通常23名以下の陪審員で構成され、ある者の刑事訴追を相当とするに足りるだけの証拠があるかどうかを審査する。過半数の決定により起訴が行われることになるので、起訴陪審とも呼ばれる。他方、小陪審は、伝統的には12名の陪審員で構成され、職業裁判官から独立して裁判に関与し、法定に提出された証拠により事件の事実関係を審理し判断する。
(2)小陪審の進め方
裁判所の管轄地域内の有権者(18歳以上の者)の中から無作為で一定の候補者を選出し、その候補者の中から抽選で陪審員が選ばれるが、事件当事者の代理人である弁護士は、選出された陪審員に質問をし、その者に事件に対する偏見や何らかの予断がある場合や利害関係があることが分かった時には、忌避することができる。こうして選出された陪...