1 © 環境エネルギー政策研究所 太陽光発電 :ドイツの驚異的な成長と日本の 政策課題 ~ 太陽光発電トップランナ「返り咲き」を 目指して 2007 年4月 24 日 飯田 哲也 環境エネルギー政策研究所 所長 東京都 太 陽 エ ネ ル ギ ー 利 用 拡 大 会 議 第1 回 太 陽 光 発 電 利 用 拡 大 検 討 会 用資料 2 © 環境エネルギー政策研究所 急成長する自然エネルギーへの 投融資 自然エネルギーへの世界全体の投融資額は、過去 2 年間で 2 倍を越える増加で約8兆円 規模へ。さらに 2007 年は 20 %増・ 85 億ドル(約 10 兆円)が見込まれている。
3 © 環境エネルギー政策研究所 急 成長する太陽光発電への投融資 太陽光発電は、一般公開株式市場におけ る自然エネルギー投融資で最も期待され ている – ベンチャー投資やプロジェクト投資でも 太陽光発電 市場は、大きな 期待をけ ている S o u r c e : N ew E n e r g y F i n a n c e S e w n e 105 百万ドル 燃料 電池 127 百万ドル サービス&支援 134 百万ドル エネルギー 貯蔵 163 百万ドル 次世代 配電 272 百万ドル 需要 管理 664 百万ドル 風力 発電 746 百万ドル 太陽光 発電 804 百万 ドル バイオ 燃料 設備 投資 技術開発 投資 2006 年 12 月までの 数字 出典 : New EnergyFinance 13 億ドル 152 億ドル 14 億ドル 36 億ドル 64 億ドル バイオ 燃料 バイオマス&廃棄物 太陽光 発電 風力 発電 他の再生可能エネ 太陽光 発電 44 億ドル バイオ 燃料 25 億ドル 風力 発電 12 億ドル 他の低炭素 技術 12 億ドル 他の再生可能 エネ 5 億ドル バイオマス&廃棄物 4 億ドル 公開株式市場での 投資額 (2006) ベンチャー キャピタル での投資額 (2006) プロジェクトベースでの投融資額 (2006) 4 © 環境エネルギー政策研究所 ドイツの太陽光 発電 の飛躍的拡大 近年のドイツの太陽光発電市場の急成長 が
、世界の市場を牽引 している。 出典 : NEF,EurOvserver を 参考に、 環境エネルギー政策研究所が 作成 5 © 環境エネルギー政策研究所 太陽光発電産業では世界の トップを走る日本だが・・ 急成長する 市場の中で、 太陽光発電の産業分野の勢力図にも変化が生じている。日本企 業の太陽光発電 生産量 は 、シャープを筆頭に 合計で約5割のシェアを 維持しているが 、 ド イツ、 中国等で急成長企業が 誕生している 。 また、 多結晶シリコン製造技術にはジーメンス (Seimens) が 競争力を持つ。 出典 : New Energy No.6 (Dec.2006) 出典 : IEA 太陽光発電システムの 生産量 多結晶リコンの生産量 見通し 6 © 環境エネルギー政策研究所 ドイツの自然エネルギー政策と太陽光 発電の導入量 ドイツ型の価格低減型の固定価格制が太陽光発電の急激な普及の原動力となった 7 © 環境エネルギー政策研究所 ドイツの成功要因: 2000 年 導入( 2004 年 改正) の自然エネルギー法 (EEG) の 成功 電源ごとの固定価格 – 20 年間の価格保証で投資リスクを 回避 – ステップダウン方式でコスト低下を 保証
東京都太陽エネルギー利用拡大会議
第1回 太陽光発電利用拡大検討会用資料
太陽光発電:ドイツの驚異的な成長と日本の政策課題
~太陽光発電トップランナー「返り咲き」を目指して
2007年4月24日
飯田 哲也
環境エネルギー政策研究所 所長
©環境エネルギー政策研究所
1
急成長する自然エネルギーへの投融資
自然エネルギーへの世界全体の投融資額は、過去2年間で2倍を越える増加で約8兆円
規模へ。さらに2007年は20%増・85億ドル(約10兆円)が見込まれている。
©環境エネルギー政策研究所
2
急成長する太陽光発電への投融資
太陽光発電は、一般公開株式市場におけ
る自然エネルギー投融資で最も期待され
ている
公開株式市場での投資額(2006)
– ベンチャー投資やプロジェクト投資でも
太陽光発電市場は、大きな期待を受け
ている
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44億ドル
太陽光発電
25億ドル
バイオ燃料
風力発電
12億ドル
他の低炭素技術
12億ドル
他の再生可能エネ
5億ドル
バイオマス&廃棄物
4億ドル
Source: New Energy Finance
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ベンチャーキャピタルでの投資額(2006)
プロジェクトベースでの投融資額(2006)
13億ドル
バイオ燃料
804百万ドル
太陽光発電
746百万ドル
64億ドル
272百万ドル
エネルギー貯蔵
次世代配電
134百万ドル
163百万ドル
サービス&支援
燃料電池
127百万ドル
105百万ドル
風力発電
バイオマス&廃棄物
36億ドル
152億ドル
設備投資
技術開発投資
2006年12月までの数字
©環境エネルギー政策研究所
バイオ燃料
664百万ドル
風力発電
需要管理
他の再生可能エネ
太陽光発電
14億ドル
出典: New Energy Finance
3
ドイツの太陽光発電の飛躍的拡大
近年のドイツの太陽光発電市場の急成長が、世界の市場を牽引している。
©環境エネルギー政策研究所
出典: NEF, EurOvserverを参考に、環境エネルギー政策研究所が作成
4
太陽光発電産業では世界のトップを走る日本だが・・
急成長する市場の中で、太陽光発電の産業分野の勢力図にも変化が生じている。日本企
業の太陽光発電生産量は、シャープを筆頭に合計で約5割のシェアを維持しているが、ド
イツ、中国等で急成長企業が誕生している。
また、多結晶シリコン製造技術にはジーメンス(Seimens)が競争力を持つ。
太陽光発電システムの生産量
多結晶シリコンの生産量見通し
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出典: New Energy No.6 (Dec.2006)
出典: IEA
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5
ドイツの自然エネルギー政策と太陽光発電の導入量
ドイツ型の価格低減型の固定価格制が太陽光発電の急激な普及の原動力となった
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6
ドイツの成功要因:2000年導入(2004年改正)の自然エネルギー法(EEG)の成功
電源ごとの固定価格
20年間固定価格の保証
– 20年間の価格保証で投資リスクを回避
– ステップダウン方式でコスト低下を保証
- 毎年段階的に低下する価格
太陽光発電は▲ 5%/年の低下(空き地は▲6.5%/年)
– 価格例
- 太陽光(2004年改正後)
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©環境エネルギー政策研究所
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7
ドイツの再生可能エネルギー制度電力買取の仕組み
公平な費用負担
–電力会社を通して需要家が公平な負担
*ドイツ環境省の試算によれば、
-2005年度 1.7 セント/月・世帯(約275円)
↓
-2014年度 2.8 セント/月・世帯(約450円)
↓
-その後も自然エネルギーの導入は進むが
(2020年に25%の見通し)、コスト低下の効
果によって、段階的に費用負担は低減して
いく見込み
A
B
A
A
B
A
再生可能エネルギー発電事業者からTGOへ買い上げの流れ
B
TGOから一般需要家への再生エネルギー電力の販売の流れ
B
送電系統運用者(TGO):
地域独占で大規模な発電事業を手がけ、地域の配電事
業者に売電を営む事業者。大手4社で全発電量の90%
超を占める。
出所:「ドイツ再生可能エネルギーにおける負担平準化メカニズム」
経産省総合エネルギー調査会 新エネルギー部会 第三回市場拡大
措置検討小委員会 配布資料
http://www.meti.go.jp/kohosys/committee/summary/0000476/0001.html
©環境エネルギー政策研究所
配電事業者(GO):
全国各都市に約900社、地元の自治体との半官半民の
企業が多い。最終消費者に売電を営む。
8
固定価格制vs固定枠(RPS)制
日本が採用したRPS法は、普及効果に劣るだけでなく、費用低下の効果も乏しいことがEU
の経験から明らかとなった。しかも日本のRPS法は、英国の政策デザインよりも劣る。
固定価格制を導入した代表的な三カ国(ドイツ、スペイン、
デンマーク(2001年まで))では、支援費用も小さく、また、
コスト低減効果ももっとも大きい。
固定価格制を導入した代表的な三カ国(ドイツ、スペイン、
デンマーク(2001年まで))は、圧倒的に導入効果が大きい。
最小~平均発電コスト(€/MWh)
平均的な普及効果指標
(風力発電のケース)
平均~最大支援費用(€/MWh)
RPSを導入した代表的な三カ国(英国、ベルギー、イタリア)
では、コストに対して支援費用が大きい。また、コストは固
定価格制と大差ない。
RPSを導入した代表的な三カ国(英国、ベルギー、イタリア)
は、導入効果が極端に乏しい。
出典: EU Report (Dec.2005)
©環境エネルギー政策研究所
9
ドイツ型の価格低減型の固定価格制のメリット
ドイツ型の制度の導入が望ましいが、地方自治体による導入はハードルが高いため、重
要な「要素」をくみ取って、その実現を図ってはどうか。
ドイツ型の固定価格制度
日英型の固定枠(RPS)制度
確実な普及効果
公正な費用負担
価格低減効果
技術イノベーション効果
産業育成効果
投資効果(マクロ、ミクロ)
地域活性化効果
不確実な普及効果
電力会社のみの費用負担
リスク費用や取引コスト
技術開発投資が低調
ウインブルドン現象
開発投資リスク
大規模開発による地域紛争
社会的(外部)費用の内部化
公正な負担
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安定した市場構造
確実な支援策
政治コミット
10
日本の政策分析
■2003年以前:政府と電力会社と市民による「意図せぬ政治的コラボレーション」
電力会社:余剰電力購入メニューによる買取りと支援(1992~)
政
府:個人向けに前例のない設置補助金の導入(1994~2005)
ユーザ:市場イノベータとなった熱心な環境主義者
■2003年以後:国の犯した「3つの失敗」
・第1の失敗: 「余剰電力購入メニュー」が視野に入らない「市場の自立化」神話
・第2の失敗:太陽光発電補助金を財務省(規制改革総点検)の生け贄に差し出す
・第3の失敗:粗雑なRPS法導入で、電力会社内部に矛盾
*最小コストでのRPS義務達成...