はじめに ................................................................ 1
1 風のエネルギー ...................................................... 4
2 風車の歴史 .......................................................... 6
3 風力発電機の仕組み ................................................... 7
4 風力発電の課題 ...................................................... 10
5 国内の風力発電 ...................................................... 12
6 海外の風力発電 ...................................................... 16
7 風力発電の環境影響 ................................................... 17
8 風力発電の経済性 ..................................................... 18
まとめ .................................................................. 19
ま え が き
いわゆる「新エネルギー」は,環境へ与える負荷が小さく,偏在による資源制約が少な
い国産エネルギーであるため,エネルギー安定供給の確保,地球環境問題への対応,およ
び新規産業・雇用の創出に資する等の意義もあることから,さらなる開発・利用が大いに
期待されている。
その開発は石油危機を契機とし活発になったが,石油危機が去り石油価格が低水準で安
定するようになると,「新エネルギー」に対する社会の関心は低下し,経済性などの点に
弱点のある「新エネルギー」が本格的に利用される時期は一時遠のいたように見えた。
しかし,最近になり,地球温暖化等の環境問題に対する社会の関心の世界的な高まりと
その取組の強化が叫ばれるようになり,エネルギーの供給および利用に際しても,環境面
で有利な特性を持つ「新エネルギー」は従来にも増して,積極的な開発・利用が期待され
てきている。
さて,この「風力発電」は「新エネルギー」の中でも,クリーンで資源枯渇の心配のな
い風力エネルギーを発電に利用したものであり,近年,世界中で地球温暖化防止上の有効
手段の一つとして大規模な開発・利用が行われてきている。
ただし,風力エネルギーは文字どおり「風任せ」であり,本来凪や暴風など不安定な風
で安定して発電するためには困難な部分が多く残されている。また,日本にはいくつかの
風力発電有望地があるものの,山国であるため乱流を生みやすく,台風の襲来,落雷など
の克服すべき固有の課題もある。さらに,発電規模拡大上からも候補として考えられるオ
フショア(洋上)の場合は,遠浅が少ないわが国沿岸への適用上の困難もある。
このように,風力エネルギーは,まだ解決すべき課題があるが,資源が広範に賦存し,
再生可能な純国産のエネルギーであるという利点は大きい。そこで今回「風力発電」編の
再改訂を行うこととし,今後のさらなる開発・利用の参考となることを目指し,その概要
を紹介する。
なお,本編作成にあたっては,当研究所の下岡
術情報センター(センター長
小川
浩主管研究員が執筆し,エネルギー技
紀一郎)において編集した。
終わりに,このシリーズの刊行は,電力中央研究所からの受託業務「エネルギー技術デ
ータベースの体系化法の開発」の一環をなすものであり,同研究所に対して深く謝意を表
する。
2004年3月
財団法人
エネルギー総合工学研究所
理事長
秋
山
守
新 エ ネ ル ギ ー の 展 望
風力発電(再改訂版)
目
はじめに
次
................................................................
1
風のエネルギー
2
風車の歴史
3
風力発電機の仕組み
4
1
......................................................
4
..........................................................
6
...................................................
7
風力発電の課題
......................................................
10
5
国内の風力発電
......................................................
12
6
海外の風力発電
......................................................
16
7
風力発電の環境影響
...................................................
17
8
風力発電の経済性
.....................................................
18
..................................................................
19
まとめ
は じ め に(1)(2)(3)(4)
(2) 経済性の面での制約から普及が進展してお
らず,かつ,
風力エネルギーは,いわゆる「新エネルギ
(3) 石油代替エネルギーの促進に特に寄与する
ー」あるいは「再生可能エネルギー」の一つで
もの
あるが,石油危機を契機として,風力発電に対
として,我が国が積極的に導入促進を図るべき
する関心が世界的に高まったことがある。その
政策的支援対象と位置づけられている。なお,
時期に作られたもののなかでも,米国カリフォ
具体的な「新エネルギー」としては,「供給サ
ルニアにおける,一つの地点に何百台という風
イドの新エネルギー」と「需要サイドの新エネ
車を並べるウィンドファーム(あるいはウィン
ルギー」に分類され,風力発電は前者の柱の一
ドパーク)と呼ばれる風力発電の利用は有名で
つとして期待されている。
ある。
2001年7月策定の「長期エネルギー需給見通
しかし,石油危機の終息によって,一時「新
し」によれば,風力発電の実績と目標は表1の
エネルギー」に対する社会の関心は低下し,経
とおりである。これによると,2010年度の目標
済性などの点に弱点のある「新エネルギー」の
設備規模は300万kWとなっており,1999年度の
開発は世界的に勢いを失い,その開発利用の速
8.3万kWに比べ,非常に大きな目標となってい
度は低下した。
る。
その後,1992年の地球環境サミット等に見ら
れるように,近年の地球温暖化問題に対する国
表1
際的関心の高まりもあり,1997年12月に京都で
1999年度
開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議
(実績)
(COP3)において世界規模における将来の
原油換算
枠組み案が取り決められた(京都議定書)。日
(万kl)
本は温室効果ガスの排出量を2008年から12年ま
設備規模
(万kW)
での期間中に,1990年の排出量より6%削減す
ることを約束し,2002年には同議定書が国会で
風力発電の導入実績と目標
2010年度
現行対策
維持ケース
2010年度
目標ケース
3.5
32
134
8.3
78
300
(出典:総合資源エネルギー調査会総合部会,需給部
批准された。
会報告書~今後のエネルギー政策について~
この温室効果ガスの排出量削減の一手段とし
(平成13年7月)/http://www.meti.go.jp/
て,二酸化炭素を運転中にほとんど排出しない
report/downloadfiles/g10713bj.pdf)
「新エネルギー」や「原子力エネルギー」の利
用が考えられる。これらのエネルギーは,化石
また,国の政策として「エネルギー政策基本
燃料に比べ,環境へ与える負荷が小さく,資源
法」が,エネルギー政策の大きな方向性を示す
制限が少なく,石油依存度を低下させる石油代
ことを目的として,2002年6月に公布・施行さ
替エネルギーとしてエネルギー安定供給にも資
れた。その基本方針は「安定供給の確保」「環
し,さらには新規産業・雇用の創出等にも貢献
境への適合」「市場原理の活用」としたもので
するなど様々な意義を有している。
あるが,その具体的展開をはかるための「エネ
特に,「新エネルギー」は,1997年に施行さ
ルギー基本計画」が2003年10月に閣議決定され
れた「新エネルギー利用等の促進に関する特別
た。この中で,風力発電もエネルギー自給率の
措置法」において,
向上や地球温暖化対策に資するほか,分散型エ
(1) 石油代替エネルギーを製造,発生,利用す
ネルギーシステムとしてのメリットも期待でき
ること等のうち,
る貴重な「新エネルギー」の一つとして開発,
- 1 -
導入及び利用を着実に推進することがうたわれ
風力発電は,バイオマス発電(現在迄の実質
ている。
は廃棄物発電主体)に次いで同法適用量が多く,
さらに,2003年4月からは新エネルギー等か
特に最近民間ビジネスの人気および期待の大き
ら発電される電気を一定量以上利用することを
さが報告されている。
義務づける「電気事業者による新エネルギー等
世界的にもわが国においても風力発電の利用
の利用に関する特別措置法(RPS
は急速に拡大しており(図1,2,3),世界の
(Renewables Portfolio Standard)法)」が
風力発電の総設備容量は2002年度末で3,000万
施行された。
kWを超えている。
7,500
35,000
7,000
6,500
年間設備容量
累積設備容量
30,000
6,000
25,000
5,000
4,500
20,000
4,000
3,500
15,000
3,000
2,500
累積設備容量[MW]
年間設備容量[MW]
5,500
10,000
2,000
1,500
5,000
1,000
500
2002
2001
世界の風力発電導入の推移
2000
図1
99
98
97
96
...