風力発電12%シナリオ

閲覧数2,507
ダウンロード数15
履歴確認

    • ページ数 : 5ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    方 法
    この研究の目的は、2020 年までに風力発電を世界電力需要の12%まで拡大させる可能性を調査す
    ることである。その過程では、技術・経済・資源面でのさまざまな意味での検討を必要とした。
    この研究では、主に次のような要素を用いた。
    ●世界の風力資源とそれらの地理分布のアセスメント
    ●必要とされる発電量と配電網への受け入れの可能性
    ●風力エネルギー市場の現状と潜在的成長率
    ●風力エネルギー技術とコスト面の分析
    ●「学習曲線理論(learning curve theory)」を用いた他の最新技術との比較
    これは1999 年に発表した前研究Wind Force 10(「風力発電10%シナリオ」)の内容を更新した
    ものである。前研究と同じく、これは予測ではなく、実行可能性の調査であり、その実現は世界
    各国の政府による意思決定にかかっている。

    タグ

    資料の原本内容





    Wind Force 12

    風力発電 12%シナリオ
    2020 年までに世界の電力の 12%を風力発電でまかなうための青写真

    要約

    共著:グリーンピース・インターナショナル
    欧州風力エネルギー協会
    2002 年 5 月
    仮訳作成:グリーンピース・ジャパン
    2002 年 8 月

    ※ 本報告書には、G8 再生可能タスクフォースの共同議長の一人である Sir マーク・ムーディ‑
    スチュアートから序文が寄せられている(序文原文は要約の末尾に添付)
    ※ 全文(英文)は次のアドレスから PDF フォーマットでダウンロード可能:
    http://www.choose-positive-energy.org/html/content/news_prscntr.html





    方 法
    この研究の目的は、2020 年までに風力発電を世界電力需要の 12%まで拡大させる可能性を調査す
    ることである。その過程では、技術・経済・資源面でのさまざまな意味での検討を必要とした。
    この研究では、主に次のような要素を用いた。
    ●世界の風力資源とそれらの地理分布のアセスメント
    ●必要とされる発電量と配電網への受け入れの可能性
    ●風力エネルギー市場の現状と潜在的成長率
    ●風力エネルギー技術とコスト面の分析
    ●「学習曲線理論(learning curve theory)」を用いた他の最新技術との比較
    これは 1999 年に発表した前研究 Wind Force 10(「風力発電 10%シナリオ」)の内容を更新した
    ものである。前研究と同じく、これは予測ではなく、実行可能性の調査であり、その実現は世界
    各国の政府による意思決定にかかっている。

    風力発電の世界的位置づけ
    最初の「風力発電 10%シナリオ」レポートを発表して以来今日まで、風力は世界で最も急速に成
    長するエネルギー源としての地位を維持してきた。発電容量は年間 30%を超える割合で成長して
    いる。2001 年だけでも、容量にして 6,800 MW 近くが新たに送配電網に追加されている。
    2002 年初めまでに、世界の風力発電設備は 25,000 MW に達していた。これはおよそ 1,400 万世
    帯、3,500 万人以上の人々の需要を十分満たせる電力である。この容量の 70%は欧州が占めるも
    のの、他の地域もかなりの規模の市場として発展し始めている。現在、世界 45 ヵ国以上がこの世
    界合計に寄与し、この業界の雇用者数は約 7 万人と推定される。
    風力エネルギーを拡大させる強い推進力となってきたのは、地球規模の気候変動を防ぐという緊
    急課題である。現在、壊滅的な環境災害を防ぐには、温室効果ガス排出量を激減させなければな
    らないことを大多数の国が認めている。風力エネルギーは、主たる温室効果ガスである二酸化炭
    素の排出を完全に回避できるエネルギー源であると同時に、化石燃料発電や原子力発電に伴って
    発生する他の汚染物質の排出もない。風力発電では産業規模の容量での供給も実現できる。1997
    年に京都議定書が採択されて以来、温室効果ガス削減に関する一連の目標値が、地域や各国のレ
    ベルの課題として与えられた。そして、それらの目標値は、風力など再生可能エネルギーの割合
    を引き上げる目標値という形に置換えられてきた。

    これらの目標を達成するために、欧州でも他の地域でも、多様な市場支援メカニズムが導入され
    てきた。それはたとえば、単位発電量あたりの割増料金を支払う制度から、再生可能エネルギー
    源による発電量の割合の引き上げを電力会社に義務づけるという複雑なメカニズムまで広範囲に
    及ぶ。
    市場の拡大に従い、風力発電のコストは大幅に低下した。風力発電のキロワット時あたり発電コ
    ストは、20 年前の 5 分の 1 に落ちている。風力はすでに新規の石炭火力発電所と同等の競争力を
    備え、立地条件によってはガスとも競合できるほどである。個々の風力発電タービン自体の発電
    容量も増え、現時点で最大の業務用タービンは 2,500 kW に達している。
    急成長を続ける風力エネルギー業界に対して、銀行・投資市場も強い関心を示し、石油会社など
    の企業も新たにこの市場に参入し始めた。欧州ではドイツ、スペイン、デンマーク、アメリカ大
    陸では米国、途上国ではインドでの数々の実績に、風力エネルギーの重要な「サクセスストーリ
    ー」を見ることができる。そして、新たな市場部門も海の上に誕生しようとしており、北ヨーロ
    ッパ周辺の海に、20,000 MW を超える規模の洋上風力発電所の建設が提案されている。

    世界の風力資源と電力需要
    数多くの評価調査により、世界の風力資源の規模が莫大であり、ほぼ全ての地域と国に、くまな
    く分布していることが確認されている。技術的に利用の可能な風力資源の総量は、53,000 テラワ
    ット時(TWh)/年と試算されている。これは 2020 年について予想される世界の電力総需要の
    2 倍を超える。従って、風力の発電利用が

    資源不足

    によって制約をうけることにはならない

    と考えられる。
    特定の国に関して、より詳細な評価調査を行うと、総合的な調査で示唆されるよりもさらに高い
    潜在能力が判明する傾向がある。たとえばドイツの経済省は、ドイツにおける風力発電の潜在能
    力は、1993 年に OECD 加盟国に関する調査で示された値の 5 倍にのぼることを明らかにした。
    欧州全域にわたり−特に、新規海上市場を考慮に入れると−、2020 年までに電力需要の最低 20%
    を十分満たす潜在能力がある。
    国際エネルギー機関(IEA)は定期的に将来の電力需要見通し評価を行っている。IEA の「2000
    年 世界エネルギー見通し」では、
    「現状維持」シナリオを用いた場合、2020 年までに、世界の電
    力需要は 25,800 TWh に達すると予想されている。従って、風力が世界消費量の 12%を満たすた
    めには、2020 年までに、3,000 TWh/年という規模の発電量が必要である。
    そのようにして増加した風力発電量を送配電網へ接続するにあたって、重大な障害は存在しない。
    デンマークでは、風の強い期間中、国の西部でピークレベルの 50%までもが風力発電によってま
    かなわれていた。この研究では、容易に達成できる拡大上限値を、20%という慎重な値を想定し

    て話を進める。

    世界の電力の 12%を風力エネルギーで
    最近の傾向から判断すると、2002 年から 2007 年の期間の新規設置について年 25%の年平均成長
    率を期待できる。これは調査期間中の最高成長率で、2007 年末までに合計 120,600 MW が稼働
    することになる。2008 年から 2012 年の期間には、成長率は年 20%に下がり、2012 年までに発
    電容量は 352,241 MW に達する。その後、年成長率は 15%に、次に 2016 年には 10%に下がるが、
    この時期までに、風力発電の普及が進んでいるためで、年間設置容量は高水準に達している。2020
    年から先、年間設置容量は年 150,000 MW で安定する。これは 2030 年から 40 年の間に、世界の
    風力エネルギー総量がおよそ 3,000 GW に達し、世界電力消費量の約 20%を占めるようになるこ
    とを意味する。12%シナリオは世界の地域ごとの試算も提示している。OECD 加盟国、殊に欧州
    と北米は、率先して導入することが期待されるが、中国などの他の地域も多大な貢献をするだろ
    う。
    このシナリオの基礎となるパラメータと想定の選択にあたっては、風力エネルギー業界と他のエ
    ネルギー業界の両方における過去の経験を参考にした。以下に主な想定を記す:
    年成長率:20〜25%という成長率は重工業などの製造業界にとっては高い数値だが、風力業界の
    場合、風力発電が産業化する初期段階に、それよりもはるかに高い成長率を上げてきた実績があ
    る。タービン設置台数の過去 5 年の年平均成長率は 40%近くにのぼる。2013 年以降、このシナ
    リオの成長率は 15%に下がり、2016 年には 10%に下がる。欧州では、洋上風力市場の創出が重
    要な鍵を握っている。途上国に関しては、このような普及を達成するには、市場の発達にあたっ
    て安定した政治的枠組みを確立することが先決である、という業界の明確な意志が示されている。
    進歩率(progress rations):産業学習曲線理論から、生産される装置の数が倍増するたびに、コ
    ストが約 20%低下することが示唆されている。この調査で仮定した進歩率は、2010 年までの 0.85
    から始まる。その後、率は 0.90 に下がり、2026 年には 1.0 になる。
    風力タービンの規模の拡大:新規設置タービンの平均サイズは今後 10 年間拡大し続け、今日の
    1,000 kW(1 MW)から 2007 年には 1.3 MW、2012 年には 1.5 MW になる。タービンの規模が
    拡大するにつれ、必要な台数は減る。
    他の技術との比較:原子力発電と大規模水力発電は、比較的短期間に高水準の普及を実現したエ
    ネルギー技術である。現在、原子力発電は世界で 16%、大規模水力発電は 19%のレベルに達して
    いる。風力エネルギーは主流電力源となる可能性を持つ営利業界である。従って、12%シナリオ
    の対象とする期間は、これら 2 種の技術の過去の発展に要した時期とも一致する。

    2020 年までに 12%を風力エネ...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。