中国の環境問題と環境規制の現状

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    「中国の環境問題と環境規制の現状」
    日時:2007 年 8 月 24 日
    中国海洋大学 法政学 院院長 徐 祥 民
    環境問題は、科学性、法律性、政治性、文化性という4つの側面を持つ。環境問題
    の解決は科学技術に委ねられており、法律性とは環境規制のことである。政治性とは
    国の環境政策の善し悪しが政治によって変わるからである。文化性とは、環境への意
    識や態度は民族の文化伝統に根付いたものだからである。
    1.中国の環境問題と要因分析
    中国 政府は多額の財政資金を投入して環境問題の解決をはかっていこうとしている
    が、いまだ理想にはほど遠く、未解決の課題を抱えたまま、次々に新たな問題が発生
    している状況にある。
    環境問題の現状
    (1) 水質汚染
    2006 年に実施した全国 745 ヵ所の水質モニタリング結果では、全国の表層水資源
    の汚染は、中度汚染といわれている。汚染度の低いⅠ類からⅢ類が40%、Ⅳ類が22%、
    Ⅴ類が 10%、Ⅴ類超は 28%となっている。中国の七大水系のうち海河と淮河水系は
    中度汚染である。
    また 、27 の国家重点湖のうち 13 湖(48%)はⅤ類超である

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    資料の原本内容

    「中国の環境問題と環境規制の現状」

    日時:2007 年 8 月 24 日
    中国海洋大学

    法政学院院長







    環境問題は、科学性、法律性、政治性、文化性という4つの側面を持つ。環境問題
    の解決は科学技術に委ねられており、法律性とは環境規制のことである。政治性とは
    国の環境政策の善し悪しが政治によって変わるからである。文化性とは、環境への意
    識や態度は民族の文化伝統に根付いたものだからである。

    1.中国の環境問題と要因分析
    中国政府は多額の財政資金を投入して環境問題の解決をはかっていこうとしている
    が、いまだ理想にはほど遠く、未解決の課題を抱えたまま、次々に新たな問題が発生
    している状況にある。

    環境問題の現状
    (1)

    水質汚染

    2006 年に実施した全国 745 ヵ所の水質モニタリング結果では、全国の表層水資源
    の汚染は、中度汚染といわれている。汚染度の低いⅠ類からⅢ類が 40%、Ⅳ類が 22%、
    Ⅴ類が 10%、Ⅴ類超は 28%となっている。中国の七大水系のうち海河と淮河水系は
    中度汚染である。
    また、27 の国家重点湖のうち 13 湖(48%)はⅤ類超である。昆明湖(北京)はⅢ
    類、西湖(杭州)、東湖(武汊)、玄武湖(南京)、大明湖(済南)はⅤ類超である。
    大型ダムの周辺についても、10 ヵ所のうち 5 ヵ所はⅤ類またはⅤ類超である。
    (2)

    大気汚染

    大気汚染は一部の都市で非常に悪化している。2006 年に 559 都市をモニタリング
    した結果、Ⅰ類に属するのは 24 都市(4.3%)に過ぎず、Ⅱ類が 325 都市(58.1%)、
    Ⅲ類が 159 都市(28.5%)、Ⅲ類超は 51 都市(9.1%)に上っている。Ⅱ類超の都市
    が殆どを占めるということである。
    酸性雨の発生も増えている。2006 年には 524 都市中 283 都市・県(54.0%)で酸
    性雨が発生している。また、発生頻度 25%以上の都市は 198 都市(37.8%)、発生頻
    度 100%も 6 都市に上っている。
    (3)

    海洋環境汚染

    2006 年のモニタリング調査では海洋環境汚染は、全体としてはやや改善しているも

    1

    のの、一部で非常に状況が悪い地域があり、Ⅳ類、Ⅳ類超の地域も増える傾向にある。
    四大海域(渤海、黄海、東海、南海)のうち渤海近海海域は軽度汚染、東海近海海域
    は中度汚染とされている。
    (4)

    固体廃棄物の汚染

    固体廃棄物には産業廃棄物、医療廃棄物、生活廃棄物、農業廃棄物がある。全体の
    産出量は年々増加する一方であるが、回収率は低い。2006 年の産業固体廃棄物発生量
    は 15.20 億トンで前年比 13.1%の増加、不適正処理(投棄)量は 1,303 万トンで前年
    比 21.3%減少した。
    (5)

    森林の減少、草原の退化

    国内の森林資源の適正供給量は年間 2.2 億立方メートルであるが、これは需要の
    40%に過ぎず、森林は年々減少を続けている。また、2003 年の予測では、天然草原
    の 90%に退化が見られ、その規模は年間 200 万ヘクタールに上っている。
    (6)

    農業汚染と農村環境汚染

    1997 年の政府統計によると、1,000 万ヘクタールの耕地が汚染されている。農業汚
    染は一次汚染のみならず二次汚染が懸念されるなど複雑である。日本の土壌汚染防止
    策などが参考になると考えている。

    環境破壊の要因分析
    環境破壊の要因には人的要因と自然要因がある。
    (1)

    自然要因

    環境破壊の多くは自然要因である。例えば黄砂の発生は、ほとんどは自然要因であ
    る。何故なら、昔の記録にその記述があることから工業文明が原因とはいえず、また、
    毎年、春の雨が少ない季節に年間降雨量が 100 ミリメートル以下の地域で発生してい
    るからである。
    (2)

    地球の気候変動

    1997 年にはエルニーニョの発生に伴い、高温と旱魃という気象災害が発生した。同
    年 6 月〜8 月にかけて、中国北部地域の大部分では降水量が例年の 5〜7 割減という状
    況であった。そのため、増水期にもかかわらず黄河や淮河で水枯れが起きたのである。
    このように地球全体の気候変動が中国の環境を悪化している。
    (3)

    人的要因

    しかし、生活や生産活動の活発化が環境悪化に繋がっていくことは避けられない。
    産業発展の歩みからみると、中国はいま、環境悪化の圧力がかかる時期にある。これ
    まで 20 数年の中国経済の拡大によって、エネルギー消費が増大する一方、環境汚染
    も拡大した。
    中国の汚染物質の排出量はどんどん増えている。これには、生活の変化や生産活動
    により引き起こされるもの以外に次のような要因もある。


    環境事故―2005 年 11 月、中国石油吉林石化公司(吉林省)の化学工場で発生

    2

    した工場爆発事故により、有毒物質(ニトロベンゼンなど)が松花江に流入する
    という水汚染が発生。


    環境保護技術の遅れ



    環境保護措置が不十分



    違法行為による汚染物の廃棄と暴利活動

    2.中国の環境法規制
    (1)

    三度の環境立法のブーム

    1978 年に改正された「憲法」により「国家環境保護」という基本国策が確立された。
    1982 年の憲法改正では、これをさらに明確化し、
    「 国家が生活環境と生態環境を保護、
    改善し、汚染とその他の公害を防止する」、
    「 国家が自然資源の合理的な利用を保障し、
    稀少動植物を保護する。組織や個人もいかなる手段を用いても自然資源を占拠あるい
    は破壊することを禁止する」と規定した。
    これまで、中国政府による環境立法のブームは三度ある。一度目は 70 年代末から
    80 年代初めであり、この時期には中国初の「環境保護法(試行)」(1979 年)、「海洋
    環境保護法」(1982 年)が公布された。
    二度目は 90 年代中期であり、5 つの新法の制定、5 つの法改正が行われ、その他関
    連する法規も、環境保護に基づいて、調整が行われた。例えば 1997 年に「刑法」が
    改正された際には、環境資源破壊行為に対する罪名が新たに追加された。
    三度目は、今世紀の初めから現在である。この時期には環境保護の理念を新しくし
    た。これに基き「クリーナープロダクション法」が制定され、
    「循環経済法」も起草さ
    れている。
    (2)

    中国の環境法体系

    中国の環境法体系は環境総合法、汚染防止法、資源と生態保護法および関連手続き
    法から構成されているが、総じて言うと完成されたものではなく、いまだ発展途上と
    言える。主な法律の名称は以下の通り。
    環境総合法に含まれる主な法律:
    ①環境保護法
    ②クリーナープロダクション法
    ③循環経済法
    ④循環型社会法
    汚染防止法に含まれる主な法律:
    ①大気汚染防止法
    ②水質汚染防止法
    ③騒音汚染防止法
    ④海洋汚染防止法

    3

    ⑤放射性汚染防止法
    ⑥固体廃棄物汚染防止法
    資源と生態保護法に含まれる主な法律:
    ①土地保護法
    ②草原保護法
    ③森林保護法
    ④自然保護区法
    ⑤野生動植物保護法
    ⑥鉱山資源保護法
    ⑦遺伝資源保護法
    ⑧砂漠化防止法
    ⑨海岸地域および島保護法
    関連手続き法に含まれる主な法律:
    ①民事訴訟法
    ②行政訴訟法
    ③行政再議法
    ④海事特別訴訟手続き法
    ⑤仲裁法
    なお、これらの法律は以下の 5 つの立法機関により制定される。
    ①全人代及び全人代常務委員会が制定する法律。
    ②国務院が制定する行政法規。
    ③各省、市、自治区と承認された比較的規模の大きな市の立法機関が制定した地方
    法規(例えば「河北省放牧禁止畜舎飼育管理方法」「山東省環境保護条例」)。
    ④国務院に属する各部委員会が制定する部門規則。
    ⑤各省、市、自治区と承認を得た比較的大規模な市政府が公布する地方法規。
    中国の環境法において重要なことは環境標準であるが、近年、中国の環境標準は、
    基本的にハードルを高くし、適用範囲も拡大する傾向にある。その環境標準には外国
    を参考にしたものと中国独自のものがある。独自のものとしては、例えば生産施設の
    計画、建設、操業の三段階において同時に環境保護施設の計画、建設、操業を行う「三
    同時制度」がある。このほか、海洋の「有償使用制度」や漁業資源保護のための「休
    漁制度」などもある。

    3.中国の環境整備の措置
    中国政府は環境問題に対し法規制を強化する以外にも、様々な措置をとっている。

    4

    (1)

    健全な「グリーン機構」の建設。

    中央政府、地方政府の専門部局だけではなく、一般部局においてもグリーン機構を
    設置している。
    (2)

    環境保護計画の制定と実施。

    中国の中核的な環境政策である「中国環境保全 21 世紀アジェンダ」、「中国海洋 21
    世紀アジェンダ」の中に、環境保護計画を策定している。例えば、 三河・三湖流域水
    汚染防止第十次 5 ヵ年計画

    があり、その他にも渤海、長江、珠江における計画もあ

    る。
    (3)

    環境保護への資金投入による専門環境整備プロジェクトの展開。

    中国政府は 2006 年には 2,402.8 億元を支出し、例えば以下のようなロジェクトを
    展開している。
    ①退耕返林(耕作をやめて林に戻す)プロジェクト
    ②北京市天津市、黄砂源整備プロジェクト
    ③退牧返草(放牧から草原に戻す)プロジェクト
    ④農村メタンガスとクリーンプロジェクト
    (4)

    環境保護の法律の実行を強化

    環境に関わる法律の執行は、不十分であり、国家環境保護総局は執行強化に注力し
    ているところである。
    (5)

    突発事件の処理

    ...

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