平和主義原理の中核は「平和的生存権」であり、これは日本国憲法前文にある「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という文言から導かれる。この中の「恐怖」というのは、この憲法が、第二次世界大戦の惨劇のあとに生み出され、近代立憲国家からの飛躍を目指したものであるところ、大雑把ではあるが、「戦争」のことを指すといっても問題はないだろう。そして、戦争(武力行使)は、結局のところ政府・権力による発動でしか起こりえず、いったん戦争となってしまえば、人権主体・主権主体である国民が戦争への人的手段としての動員対象になる危険性がある。
今回の講演会は、憲法 9 条と有事法制についてと国家による人権保障制度への疑問をテーマ
に行われた。このうち、国家による人権保障制度への疑問という横田先生の講演は、時間の関係
もあり、聞きたかった「社会権、精神的自由権の国家による人権保障」についての部分が省略さ
れてしまい、どちらかといえば日本における問題提起の部分が多くなっていてしまっていたので、
レポートでは「憲法 9 条と有事法制について」というテーマについて書くことにした。
[憲法 9 条と有事法制について]
和田先生は、前提として 21 世紀の国際社会について、米・ブッシュ政権のイラク攻撃準備と米
軍事戦略、国連憲章体制について...