肖像権

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    資料紹介

    集団行進のように本来公衆に向かってその存在を誇示する性質の行為については、参加者自らが肖像権を放棄している以上、その参加者を写真撮影したとしても何ら肖像権の侵害とはならない(違法という問題は生じない)という考え方がある。しかし、集団行進の参加者は、集団行動の一部に加わったことを識別される程度に撮影されることは容認したとしても、容貌をはっきりと認識できる程度(面通しのための材料として使用できる程度)にまで撮影されることまでは容認していないと考えるのが妥当である。したがって、集団の形状の撮影に止まらず、個人の顔写真として利用できる程度の写真撮影をなすことは、肖像権の侵害として無制限には許されないと解する。
    本判決においても、集団行進の参加者について容貌などを正当な理由なく撮影されない自由を認めている。これについて、本判決は「これを肖像権と称するかどうかは別として」とことわり書きしているが、示された自由の内容は肖像権であるといってよく、実質的に肖像権を新しい人権の一つとして認めたものと評価できる。

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    一.被疑者の写真撮影と肖像権/京都府学連デモ事件(最大判昭和 44 年 12 月
    24 日)
    1.事実の概要
    当時学生であった被告人は、京都府学連主催のデモ行進に参加した。デモ隊は東山区
    円山公園に向う途中、機動隊ともみ合いとなり、京都市公安条例の定めた許可条件に外
    形的に違反する状況になった。そこで、許可条件違反等の違法状況の視察、採証の職務
    に従事していた京都府警の巡査がこの状況を見て許可条件に違反したと判断し、被告人
    の属する先頭集団の行進状況を撮影した。それに気づいた被告人は、「どこのカメラマン
    か」と抗議し、同巡査が殊更にこれを無視する挙動に出たことから、憤慨しデモ隊員の
    持っていた旗竿をとって、同巡査の下顎部を一突きし、全治約一週間の傷害を与えたた
    め、傷害罪(刑法 204 条)および公務執行妨害罪(刑法 95 条 1 項)で起訴された。そこで、
    被告人は同巡査の職務行為は不適法である、被告人の所為は自己の人格権ないし肖像権
    の急迫不正の侵害に対する正当防衛であるとして争った。
    第一審(京都地裁昭和 39 年 7 月 4 日判決)は、巡査の写真撮影行為は捜査のため不必...

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