大同での緑化協力
小学校付属果樹園
日本では学校に行かない子どもがふえていますが、大同には中学校にさえ、行きたくても行けない子どもがまだいます。村によって教育事情は異なりますが、築後何百年もたっていまにもくずれそうな古い道教の廟を校舎にしていたり、雨が降ると雨漏りをするから休校、というような学校もあります。村の教育条件を改善し、どの子も学校に通えるようにしよう。そんな思いで、この協力活動をはじめました。 アンズやリンゴなどの果樹を植えて、収益があがるようになったら、その一部を教育費にまわしてもらうのです。
小学校付属果樹園をはじめた当初は、「少しでも条件のいい土地を」と畑をつぶして植えたりしていましたが、農民からは不評でした。果樹だと、少なくとも穀物の3~5倍の収入にはなりますが、収穫ができるようになるまでには4~5年かかります。その間は、肥料代や農薬代など持ちだしばかりですから、割は悪くても毎年収穫ができる穀物の畑をつぶすことは農民にとっては死活問題なのです。それがわかってからは、耕作中の畑はつかわず、荒れ地や放棄された畑をつかうようになりました。
また、労賃を利用しての村の整備も忘れるわけにはいきません。整地や植樹などの労働に対してGENから労賃が支払われますが、ある村では「まとまった現金収入がある機会はめったにない。これを個人に分けてしまったら飲み食いに消えるだけだから、なにか後に残ることにつかおう」と村の人たちが自発的に言い出して、老朽化した小学校の校舎を建て替えました。別の村では、建設途中で資金が尽きて放置されていた村の給水設備を完成するためにつかわれました。村人がみずからアイデアを出して、GENからの労賃を村の改善にいかすということは、私たちが思ってもいなかった嬉しいできごとでした。
呉城郷の成功
これまでに建設した50ほどの小学校付属果樹園の多くで収穫がはじまりました。渾源県呉城郷(写真左)では、GENの協力による小学校付属果樹園建設をきっかけに独自でアンズを植え広げ、総面積は1,200haにもおよびます。1haあたりのアンズ(杏核)の収穫は1,300~2,500kg、収入は15,000~30,000元に達し、アワ・キビなどを栽培するのにくらべ、5~10倍になります。乾燥に強いアンズは、かなりの旱魃でも収穫が望めますが、こわいのは遅霜による凍害です。いろいろと対策を試していますが、なかなか決定打がないようです。
このプロジェクトは中国政府のすすめる「退耕還林」(条件のよくない耕地の耕作をやめ、森林や草地に返していく)のモデルとして、注目されるようになっています。大同で緑化や風砂防止の会議が開かれるさいには、必ずと言っていいほど呉城郷で現地見学会が催されます。
教育に関しても大きな変化が生まれました。呉城村では、2000年、村はじまって以来の大学生が誕生したのです。それ以降毎年数人が大学に進学しています。それだけでなく、中学生の成績と高校進学率は県でトップになりました。
また、村内に杏仁の加工場もつくり、独自のブランドで販売網をひろげています。1万人が訪れるという4月の「杏花節」が、製品の販売と宣伝のチャンスにもなっているようです。
GENの小さな協力をきっかけに、みんなが力をあわせて村の経済を発展させ、子どもたちの将来を切り開いていく。そんなモデルが、ここにできつつあります。
果樹園と沙漠化防止
果樹園が水土流失や沙漠化を防ぐ、というと意外に思われるかもしれません。いったいどういうことなのでしょう?
畑が緑で覆われるのは1年の半分。植え付け前と収穫後には耕します。作物の根は樹木ほどに深く伸びません。こういったことすべて、集中豪雨で畑の表土が流されてしまう要因です。けれど、果樹園にするとどうでしょう。毎年土が耕起されることもなく、木の成長にしたがって根は地中に伸びて土壌を保持します。果樹ですから収穫しやすいように枝はできるだけ水平方向に伸ばすので、雨が地面を直接たたくことも少なくなります。こうして、水土流失を防ぐことができるのです。
また、果樹は剪定が必要です。毎年手入れをして、不要な枝を切り落とさなければなりません。切り落とした枝は燃料になります。それまでは自然林の木の枝を切ってきたり、トウモロコシの芯や作物の茎などを利用していましたが、剪定枝をつかえば、自然林を切らずにすむし、トウモロコシの芯なども肥料として畑にいれることができます。自然林を保全し、畑の生産性をあげて効率よく農業生産をあげることができれば、条件の悪い耕地を耕す必要もなくなり、沙漠化の防止につながります。時間はかかりますが、いい方向への循環をはじめるきっかけになるのです。
情報提供先→ http://homepage3.nifty.com/gentree/kajuen.html